約 1,893,923 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1142.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (2)心の傷 神聖アルビオン共和国皇帝クロムウェルの秘書ミス・シェフィールド。 彼女は今、一人女豹のように森を疾走している。 背後からは執拗な追跡者の影が迫る。 そういう意味では、今の彼女は女豹というよりは、狩人に追い立てられる兎そのものだ。 ―はははは、どこへ行ったのかなミス・シェフィールド― 森の奥から楽しい追いかけっこに興じる子供のような、楽しそうな声。 どうやら彼女が先頃放ったガーゴイルは既に倒されたらしい。 ミス・シェフィールドはガリア国王ジョゼフがレコン・キスタに送り込んだ間諜である。 いや、間諜という表現では適正ではない。 彼女こそ裏からクロムウェルを操り、延いてはレコン・キスタがアルビオン王国を打倒するという演目を用意した立役者であった。 ウェールズ王子が討たれ、無事アルビオンが貴族派の手で制圧されたのが暫く前のこと。 それまでは、何もかもが順調であった。 しかし、その思惑に異変が生じ始めたのが数日前のこと。 まずは、自分同様に、ガリア王国から送り込まれた他の工作員達との連絡が途絶したことが発端であった。 直ちにクロムウェルにこの件を問いただすべく面会を求めたが、これも断られた。 この時、この国を脱出していれば……彼女はそう後悔してやまない。 だが彼女は健気にも、狂い始めた歯車を元に戻そうと躍起になってしまった。 あらゆる手段、あらゆる情報網から、今アルビオンで何が起こっているのかを把握しようと努めた。 そして知ってしまった、城に巣食っている、幽鬼の如き一団を。 その中には、シェフィールドの手駒であったはずのクロムウェルの姿も含まれていた。 不幸なことに、不用意なことに、彼女は更に一歩足を進めてしまった。 彼らを統べるものの存在を知ってしまった。 彼女の虚無の使い魔としての能力を持ってしても、理解の外にある存在のことを。 即座に城から脱出したシェフィールド。 しかし、すでに何もかも全てが遅すぎた。 彼女の脱走後、すぐに追跡を開始した『彼』。 「みいつけた」 そして、今に至る。 彼女の目の前にいる男、ジャン・ジャック・ド・ワルド。 「折角君とそのご主人を招待する為に宴の準備をしていたというのに、逃げ出すなんてあんまりじゃないか」 久しぶりに出会った親愛なる友人に語りかけるような、穏やかな笑顔。 「ひっ…!」 シェフィールドは今来た道を取って返して走り始めた。 そして、その前方、木の陰から現れる男、ワルド。 「酷いなぁ、人を見て逃げ出そうとするなんて」 背後には先ほどのワルド。 道を外れて草むらの中に逃げ込もうとする。 草むらの先に、白い影―――ワルド。 「どうしたんだい?幽霊でも見たような顔をして」 「いや、いやあっ!」 三人のワルド、逃げ道は無いかと周囲を見回すシェフィールド。 草木の影から、池の中から、木の上に、空中に、 ワルド、ワルド、ワルド、ワルド。 風の遍在? ありえない、例えスクウェアメイジだとしても、こんな数の遍在はありえない! では幻術?それも無い、彼は確かにそこにいる。 シェフィールドの額のルーン文字が輝きだす。 目の前の存在を理解しようとする、目の前の存在から逃げる術を探そうとする。 しかし、彼女の持つミョズニトニルンの能力は『彼』を知る力を有していない。 ―追いかけっこは満足したかい?― こだまする様に、四方から響くワルドの声。 ―君は予想以上に早く、知りすぎたんだ― シェフィールドの歯が恐怖でガチガチと打ちならされる。 ―それじゃあ― 君の頭の中を見せてもらおうかな 「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 ニューカッスルの城が落城してから二ヶ月が経過した頃、ルイズはトリステイン王宮に来るようにとの命令をうけた。 アンリエッタは、ウェールズ皇太子が亡くなられたことを酷く悲しみ、それ以来、度々体調を崩すようになっていた。 公務の合間を縫っては泣き、床については泣き、遂には公務の最中に泣き出すに至って、マザリーニ枢機卿もいよいよアンリエッタが尋常の状態ではないことに気付き、一切の公務を取りやめ、王女を半ば城に閉じ込めるような形で休養を取らせたのであった。 「ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。ただ今参上いたしました」 「お入りなさい」 ルイズがアンリエッタの私室に通されると、そこには床に伏せったアンリエッタの姿があった。 アルビオンへの旅が終わってから、ルイズがアンリエッタに会うのは、これが初めてである。 あの事件の後、すぐにでも風竜シルフィードに乗ってアンリエッタ王女に手紙を届けるつもりのルイズであったのだが、例の光の柱の影響か、アルビオンから脱出し、トリステイン領内に入った頃には高熱を出し、やがては昏睡状態に陥ってしまったのだ。 すぐさまトリステイン魔法学院へと戻ったキュルケ達は、ルイズをベットに放り込み、交代しながらの看病を続けた。 この間、ウルザがオスマンに事情を説明し、手紙と風のルビーがアンリエッタの手元に届くように手配したのであった。 久しぶりに見たアンリエッタは、以前の健康的で薔薇のような美しさはなりを潜め、かわりに儚げな白百合の美しさが漂っていた。 「姫さま………おやつれに、なられましたね」 「ああ、ルイズ。私の大切なお友達…こんな姿ですみません。何せ皆、わたくしをここから出させて下さらないのですもの」 この段に至り、ルイズもマザリーニ枢機卿の意図を理解した。 今のアンリエッタに必要なのは、おべっかを使う貴族でも、政治的判断を述べる政治家でも無い、彼女を真に理解する友人なのだと。 「ウェールズ皇太子の、お話をしてくださらないかしら」 「…分かりました」 ルイズは全てを話した。 ウェールズとの出会いから、私室でのやり取り、その夜の晩餐会、そして、礼拝堂でのワルドの裏切り。 すべては二ヵ月前の、過去の出来事。 しかし、アンリエッタ王女の中では未だに現在の出来事なのであろうことは、容易に察することができた。 「わたくしが…わたくしがウェールズさまを殺したようなもの。わたくしがあの時ワルドを選びさえしなければ…」 「いいえ、違います、姫さま。 ウェールズ皇太子は、例えあの場で殺されなくとも、きっと城に残ったに違いありません」 「なぜです!?なぜ!ウェールズさまは、亡命して下さらなかったのですか!? ルイズ!あなたはどうして彼に亡命してくださるように説得してくださらなかったの!」 「姫さま……やはり、皇太子に亡命をお勧めになったのですね」 「ええ、そうよ、死んで欲しくなかった!愛していたのですもの!」 泣き崩れるアンリエッタ、その痛ましい姿にルイズも目線をそらす。 「姫さま、私も皇太子に亡命を勧めました。けれど、皇太子は私に、姫様が亡命など勧めていなかったと仰いました」 「なぜ!?どうしてです!私はちゃんと書きました、書きましたのよ!?」 「………」 半狂乱になりながら、ルイズの肩を掴むアンリエッタ。 その美しい爪が、ルイズの肌に食い込み血を滴らせる。 「ウェールズさまは、わたくしを愛しておられなかったの!? わたくしよりも、名誉が大事だったの!? 答えて!?答えなさい!ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!!」 ルイズは堪えるように唇を噛み、真正面からアンリエッタの瞳を見返した。 「姫さま、皇太子は姫さまと、このトリステインに迷惑をかけぬ様に、国に残られる覚悟をなされたのです。 決して、名誉を守るために残られようとした訳ではございません!」 思わず強く言い返され、呆然とするアンリエッタ。 「わたくしに、迷惑をかけない、ため………?」 「勇敢に戦い、勇敢に死んでいった、それだけを伝えて欲しいと、皇太子は仰られました」 それを聞き、アンリエッタはくしゃりを顔を歪め、ルイズの胸に顔を押し付ける。 「それでも…それでも生きて、欲しかった。生きて欲しかった! 生きていてさえすれば!わたくし、わたくし!国だって捨てられるつもりでしたのに!!」 泣き崩れるアンリエッタ、その嗚咽を聞きながらじっと目を閉じる。 そうして、決心がついたルイズは、アンリエッタの肩を掴み、力任せに引き離した。 「姫さま、ご無礼いたします」 そう言いながら深々と頭を下げる。 その次の瞬間、ぱんっという音が響き、アンリエッタの頬にルイズの強烈な張り手が見舞われた。 「姫さまっ!皇太子は、皇太子は!愛する者を守る為に戦ったのです! それが王族の勤め、男の勤めだとして戦ったのです! それを、姫様はどうして分かろうとしないのです! 皇太子は、立派に責任を果たしました! その皇太子を、どうして姫さまが問うことが出来ましょう! どうしてその強さを認めようと、しないのですか……っ!」 ただ呆けたようにルイズを見つめるアンリエッタ。 むしろ逆に泣き出してしまいそうな顔のルイズを見て、アンリエッタの心の中でも、一つの決着がついた気がした。 「私も……強く、なれるかしら」 「姫さまが、そう望むなら、きっと」 自嘲気味に呟くアンリエッタに、精一杯の力を込めながら、ルイズは返したのだった。 強さとは、心が流した涙の数で決まる ―――ギーシュ回顧録第四篇 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/heavypop/pages/441.html
演説(H) [カテゴリ]ジャンル(タイプ) 曲名 アーティスト 担当キャラ bpm Time Notes [14]演説(H) 猿の経 あさき Goku-Sotsu-kun 106~126 2 16 1003 属性 階段、発狂、乱打 譜面 演説(H) (BPM表示付)(BPM表示付) 動画 http //www.youtube.com/watch?v=V5HuyU8a9jo 5.5速 http //www.nicovideo.jp/watch/sm85613 6速 フルコン http //www.nicovideo.jp/watch/sm8234968 6速 解説 やりにくい螺旋乱打が続く。時折発狂に近い密度の階段。ラストも詐称気味な殺し。 終始微妙にBPMが変わり続ける。 中盤はラブフォーチュン(EX)最難部の劣化版のような譜面 フルコン狙いの場合最初の発狂と最後の右トリルに注意 片手で2連打を処理させる箇所がある為、多少のS乱耐性が必要 名前 コメント 階段、乱打の速度は遅いのでごり押し気味でも可。ただコンボが繋げづらい -- 名無しさん (2011-06-10 00 52 41) 安定するまで鬼な曲。BPMが遅くなるとこでゲージがなくてもクリア可能だがサビの発狂が鬼門になる。 -- 亜空間とかもだけど階段・乱打が得意なら36の中で早く埋まる人もいるかも -- ミラー推奨。特に最初の螺旋乱打が大幅に押しやすくなる。 -- 36に上がりたてでも階段・乱打が得意ならやってみる価値はある。発狂部分はとにかく手を動かし、ゲージの減少を抑える事に集中すること -- 中盤〜終盤は乱打と思って押せば繋がる -- 19小節までに逆ボ位なら20と21小節目でゲージ半分持ってかれても大丈夫なので気にしない -- 最初の24が多く絡む地帯をとれればかなり違う -- 最初の螺旋3回目は青と白を忘れるとぽろぽろ落ちる -- ユーロビートHが練習になる。 -- レベル36挑戦中の人は中盤までは必ずゲージを残すことを考えて打ったほうがいい。ただし、力は入れすぎないように。 -- 階段と言うか、全部乱打という風にとらえたら意外といける。 -- 乱打と階段に耐性があるなら弱に感じる。とにかく良く見れば叩ける譜面なので、落着いて叩くことを意識しよう。 -- とにかく、落ち着いてやること。発狂が来るからと言って力を入れすぎたら乱打・階段がさばけない -- ミラー+6速で20~21小節以外は大分見やすくなる。終盤のトリルは同時押しなどでごまかすもよし -- フルコン難度は36筆頭だろう。 -- ~126になっているので倍速迷うかもしれないが、実際には124~6は一瞬に近いので730耐えられれば6速推奨 -- 階段があるが発狂があるのでS乱などが機能しにくい。 -- 細かいBPM変化に気をつけよう!ちなみに変化に気付かなかったり同じテンポになってる人は空バッドを出したり苦しめられたりする。 -- 取りあえず36と思わない方がよい。 -- 乱やS乱で簡単にはあまりならない。外れが多い。 --
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1411.html
前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ ヴァリエールⅢ女~ニューカッスルの城~ グランパ曰く、このまま篭城を続けていれば王軍は10年は戦えるだろうが、その展開はありえ無い。 なぜならこのままではレコン・キスタは出だしから躓き、利益で繋がった結束が乱れ瓦解する。 聖地奪回のため援助していた某国の悪巧みもお流れになり資金回収もできなくなるので、そうなる前に切り札を切ってくるだろうとのこと。 敵、皇帝クロムウェルの手には虚無の秘法、アンドバリの指輪があるからである。 これを使えば死人は殺しても死なないゾンビ兵として蘇るし、300の王軍メイジがいきなり操られかねない。 いつの間にか王軍300、貴族派5万なんてありえない数の反乱になったように。 王軍が誇りを守って派手に戦って全滅してくれればレコン・キスタの圧倒的力と勢いのいい宣伝になるはずだったのだが、 あまりにも時間がかかるのなら秘法の使用で300をいきなり寝返らせる道を選ぶだろう。 あきらかに不自然で洗脳や秘法の存在を疑われるだろうが、背に腹は変えられないだろうとのこと。 後々のことを考えると、ここで戦って王と王子の死体を残すのもマズイことになる。 ゾンビ王子が姫との手紙の件をBALLSの通信機越しに世界中にカミングアウトするだけで、国辱モンの縁談破棄、同盟破棄だ。 よって、指輪を使われる前にどうにかすることが急務であるそうである。 ちなみにこの情報を集めてきたのはみんなのアイドルBALLS。 どこにでもいるので会議の盗み聞きや、奥様の井戸端会議までバッチリであるそうな。 アンドバリの指輪を奪うにはBALLSは弱すぎる。 それに、BALLSは基本的に人に直接的に危害を加えたがらない。 大量に人を殺す兵器を作るのは良いらしいのが変な話だ………。 と、そのようなことを私とグランパはお偉方の前で演説しました。やれやれ歓迎パーティーが盛り下がるわね。 アンドバリの指輪の件に関しては、ラグドリアン湖の水の精霊に中継が繋がっています。 現場のBALLSさーん 通信機のガラス板に水の精霊が出てきて、30ヶ月前にクロムウェルという男に指輪を盗まれたこと。 証拠隠滅に討伐隊が派遣されたことなどを話した。 指輪を取り返してくれるのなら、水の水位を上昇させることをやめよう。 あと、身体の一部も渡そう、とのこと。 そんな感じのことを淡々と語ってくれた。 誓約をつかさどる水の精霊が嘘をついたなどと聞かないから、こりゃ証拠として充分使えるだろう。 ところで水の精霊って縦ドリルロールだったのね。クラスメートに似てるな。 それにしてもこのレポーターの声、キュルケとモンモランシーに似てるわね。 通信が切れた後、動揺する王軍を前に、グランパは悪巧みを話し始めた。 準備と資材は揃っている。あとは、一発逆転の目にのるかそるか、だ。 話をきいた貴族たちはあきれた。こっち見んな。 ウェールズ王子様は何故か妙に乗り気だった。自重しろ王族。 次の日 BALLSもバカなら、レコンキスタもバカだ。 まさか何十メイルもある城壁には何百メイルもある破城槌を作って突破しよう!だとは。 ラ・ロシェールの港になってる大木、アノ船が木の実に見えるほどの木から削りだした材木を持ってきたらしい。貴重な文化遺産に何てことしやがるのだろうかコイツラは。 たしかにそれなら時間も距離も節約できるのだが、トリステインの通商には大打撃だ。 あの港の大木が倒れていなければいいのだが………トリステインもこれには大激怒らしい。 レコン・キスタはいずれトリステインもレコン・キスタの一部となるので、問題なし。という説明らしい。トリステインなめんな。 トリステイン陸軍、空軍、BALLSも使って傾いた大木の補強作業中とのこと。援軍は期待できない。 あのでかい御柱みたいなのが突進してきたらBALLS自慢の城壁もあっさりと突き崩されてしまうだろう。 間に合わないかもしれない。BALLSに作業を急がせた。 ギーシュも気絶してないで手伝え。 貴族派の破城槌の準備が整った。 レキシントンにご立派な衝角が取り付けられている。自重しる。 音に聞くアルビオン空軍の戦艦もかなりの数が姿を見せている。 今日で決めるつもりだろう。しかもここを持ちこたえてしまえば、指輪の洗脳攻撃が来る。 作戦開始だ! ヴァリエール1号も動く! 今、ここ艦橋にはシエスタとギーシュはいない。別の部署に行ってもらっている。どうせ飛行長はいらないしね。 私自身は操舵席前に陣取っている。 私も艦長席で遊んでいたわけではない、操舵の訓練を予め受けていたのだ。 操舵を補佐してくれるBALLSと、何でも補佐してくれるBALLSのおかげでどうにか仮免クラスには操舵出来ている。 さて、ヴァリエール1号の出番だ。 「魚雷管1番から32番発射!」 「おう、1番から32番撃つぜ!景気良くておでれーた」 ヴァリエール1号の背中が開き、射出される弾頭が四方八方に散らばっていく。弾頭には凶悪な顔が書かれていた。 その弾頭は着弾すると同時に盛大に煙を吐き出し始めたのだ。 煙幕弾頭×32であります。 貴族派は視界を奪われ何も出来ず混乱状態だ。その中に適当にミサイルが打ち込まれるだけで混乱に拍車をかける。 スクウェアメイジの風の大竜巻も空気をかき混ぜるだけで、煙を吹き飛ばすには至らない。 なんせ幻獣のれーざーすら減衰させる煙幕弾頭は相当にしつこく、煙を吐き出し続けるのだ。 煙をものともせず、破城槌を結びつけたレキシントンが迫る。 迎撃のミサイルはカッタートルネードで打ち落とされる。 破城槌が城壁に直撃。 あんなでかかった城壁があっさりと破壊された。あの大木は相当な硬さを誇っているらしい。さすがは世界遺産。 何度も槌がぶつかると、城壁は嘘のように崩れていった。 壊れた城壁部分に兵士たちが集結すると、一斉に城内に突撃する。 このまま城に入り、護衛の兵のいないメイジを数に任せて殺戮するのだ。 煙で視界が良くないが、このまままっすぐ行けば城に辿り着くだろう。 城に……………。 城に……………。 あ、城がないじゃん ニューカッスル城のあったところにはぽっかりと穴が開き、アルビオン大陸の底が見えました。 そのさらに下のほうにはそのまま小さくなっていく城の影が……… 兵士たちの顎が落ちた。 「では殿下、ご命令をお願いします」 「子供のころに思いついたこんなアホなセリフを言うことになるとは夢にも思わなかったな…… ニューカッスル城、発進せよ!」 「アイ、アイ、プリンス」 ポ~~ン ニューカッスル城が出航しました!! 城の真下についた大きな火を吹くブースターと穴掘りドリル、城壁から伸びるでかい羽根とプロペラエンジン、 城の屋根の上にはたくさんプロペラが回って揚力を稼いでいる。 ニューカッスル城はBALLSのおかげでめでたく浮遊大陸の浮遊城になったのである。 上にある増築された城壁に目を引き付けて、篭城すると見せかけて足止めし、 穴を掘って下から城ごと逃げ出すという古典的作戦だ。 掘った穴の土や岩は上にあるデカイ城壁の材料になっています。 この作戦の弱点は内通者。内通の可能性が少しでもあるものには教えられないし、他国のものを使うのもちょっとご遠慮願いたいとのこと。 城の穴掘りにはギーシュのモグラが役に立ってくれました。 崩れないように計算して掘った穴のスペースに、城を浮かすためのブースターを設置していく。 下に沈みながら逃げる城は、城を完全に覆うように作られた城壁が隠してくれるだろう。 この作戦は穴掘りの専門家、ギーシュ、の使い魔がいなければ成功しなかった作戦なのである。 ちなみに城の操縦はシエスタ・タキガワに。 スイッチが100以上やレバーが20以上あるフルマニュアルの操縦席を作ってもらって操縦している。 ここまで複雑化したものだとBALLSには操縦できない。そもそも戦闘機動は無理。 タキガワ一族のお家芸の見せ所である。 突貫作業だったので色々出るエンジンの不調に対応しながら、時々回避機動を混ぜながら城を飛ばしていく。 「3番エンジン不調、2分後に止まりますので修理に向かわせてください」 「了解!ワルキューレ1号行け!」 「5番プロペラ破損、丸ごと交換をお願いします。回避します!ご注意ください」 「了解!ワルキューレ2号3号!プロペラはソフトに担いでいくんだ!!」 エンジンの修理に駆け回るのはワルキューレだ。おびただしいBALLSを引き連れてプロペラやエンジンに走り、修理箇所を特定し命令出来る。 それをモニター越しに指示するギーシュ、この方法なら同時に7箇所の修理を指揮できる。 ギーシュが倒れに倒れまくって鍛え上げた指揮技能99が光る。 今のギーシュなら7対200ではなく、7対7を数十回繰り返す戦法を思いつけるだろう。 「5時の方向上空より竜騎士3接近きゅいきゅい」(モグラ) 300のメイジは迎撃だ。 城を追って飛んでくる竜や幻獣たち。 飛んでくる魔法を風でそらし、追ってくる竜を魔法と狙撃とミサイルで打ち落とす。 壊れた部分には土メイジがギーシュの戦法を利用してゴーレムを動かしてBALLSを向かわせる。場合によってはゴーレムそのものを資材として修理させる。 「魚雷管1番から8番発射!」 「おう、浮遊機雷8発発射したよ。おでれーた」 ヴァリエール1号は要所要所で囮になったり砲撃したりとしていました。 結構食らうが、ブロック構造と隔壁のためかダメージそのものは少ない。 シールド突撃ができれば一網打尽らしいのだが、あいにくとシールドは技術的に作れなかったらしい。 壊れて直るを繰り返すニューカッスル城。 城に戦力を集中させていたアルビオン貴族派は、城跡の穴が小さくて戦艦を追っ手にはできなかった。 まあそのまま穴を潜ってきてた船は罠にかかって沈んでたんだけどね。 次第に竜騎士追撃の数も減り、城は独走のまま退却できた。 グランパ曰く、今はコレが精一杯、 この結果を受け止める私たちもいっぱいいっぱいです。 このまま城ごと脱出して、夜明けの船に習って逃げながら戦ってゲリラ戦と空賊行為で時間を稼いでもらい、その間にレコン・キスタの状況を悪化させる。 それと秘法の洗脳を解く手段も並行して探る。 このまま王軍を全滅させられず取り逃がせば、レコンキスタの支持者も増えにくいだろう。 城ごと逃げ出すなんてアホなもの見せられてはね。 王子も亡命して迷惑かけずにすむし、城からも逃げ出さないことになるので万事OK。城そのものは逃げましたが。 最悪でもこのままジリ貧で討ち死に、死体も有効利用されるよりはマシだろうとのこと。 プロペラをブルンブルン言わせながら飛んでいくニューカッスル城が夕日に赤く染まる。 BALLSのポッケは大きすぎらあ ルイズはとんでもないものを盗んでいきました。 それはアルビオン城です。 では、失礼します。 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~
https://w.atwiki.jp/heavypoplv43/pages/119.html
演説(EX) [カテゴリ]ジャンル(タイプ) 曲名 アーティスト 担当キャラ bpm Time Notes [14]演説(EX) 猿の経 あさき Goku-Sotsu-kun 106~126 2 01 1164 属性 同時押し、階段、発狂、縦連打、ラスト殺し 譜面 演説(EX) 動画 http //www.youtube.com/watch?v=0mqu3MHUXUs 解説 AC18でLv42→41にダウン↓ やや易しい序盤と、中盤の回復地帯を越えた後は二回の発狂があり、さらにラストにはスペースワルツEXのラスト並の階段が待ち受ける譜面。 殺し地帯に入るまでは41を捌けるぐらいの実力があれば十分フィーバー可能。 発狂部分は基本的に同時押し。階段に入る寸前でグッドゾーン4~5本は欲しい。 ラストの長蛇階段はズレた同時押しだと考えて餡蜜しても良い。 ラストの階段はスペースワルツEXが練習になるかも。 名前 コメント 41強の面子では珍しい地力譜面 -- ボーダー付近ならラスト階段第3波の右白は迷わず捨てるべき -- ラストの階段は大して速くない。階段得意なら十分回復にもなり得る -- ラスト階段第2波は6で折り返すことを覚えるべき。右手を456においてベタ押しが有効。 -- ラストの階段がどうしても出来ないなら乱という選択肢もある。無理押し耐性あるならどうぞ。乱で当たれば結構クリアしやすい。 -- って事で左→右が得意なら正規。右→左なら鏡。ラスト殺しが楽になるかも。 -- 階段でどこからが押しやすいか把握する。左→右なのか右→左なのか。で譜面を見てどこに流れる階段が多いかで正規か鏡を判断するのも手じゃないかな? -- ラストの階段で削られ過ぎてしまう人はHSを上げたほうがいいかも。0.5上げるだけでも捌きやすさが違う。 -- ややわかりにくい位置に白青同時押しがあり左右振りと気づきにくい譜面 -- あまりやりすぎると、後半が出来るようになっても前半が出来なくなり、ラストまでにフィーバーにいけず、逆ボなんて事も。癖には注意。特に一番最初の所。 -- 最初と、ブレイク前の黄青交互に白とかくっついた地帯は鏡が有効な場合も。縦連打や発狂の1つ1つなど、細かい取りこぼしが意外に影響しやすいので丁寧に詰めていこう -- LV41の上級曲。発狂の同時押し、ラストの階段、微妙はソフランなど総合力が意外にも試されるので、地力がある人は41中適性でも越せる。 -- 感想(私的なことなどや、悩み事などはこっちにどうぞ。) 乱当たりはどれくらいの割合? -- new{10/07-25 (日) 22 29 55};正規より簡単になることは全くない -- new{10/07-25 (日) 22 35 23};ある -- new{10/07-25 (日) 22 36 34}; 40弱になったことが・・・でも無理押し耐性必須 -- new{10/07-25 (日) 22 41 45}; 楽になるのは22~44小節と最後の階段だけ あとは無理押しの嵐になると思われ -- new{10/07-28 (水) 12 03 39}; 演説のラストよりスペースワルツのラストが取りにくい俺は異常か? -- new{10/07-25 (日) 10 33 52};別に -- new{10/07-25 (日) 10 37 31}; クリア目的ならむしろそれが普通な気がしてならない。スペワルは低速+階段自体の速度変化+大折り返しとかありえん、まじありえん。 -- new{10/07-25 (日) 10 43 31}; スコアとかコンボ無視して、正規でどっちか安定してるほうクリアして?っていわれたら間違いなく演説を選ぶ。 -- new{10/07-25 (日) 22 34 30}; あれは幅が広いからむずい -- new{10/07-25 (日) 22 35 50}; 41強は1つしかクリアできてないけどいけたから、個人的には41中だなぁ。怪獣<近代<演説<V(ボーダー)<ケンカ(未クリア)。ケンカも41強クラスと比べてクリアの希望がある。そういえば演説もケンカも自分みたいな挑戦中の人の意見ってあまり出てない気がする -- new{10/07-12 (月) 02 28 59};挑戦中だが喧嘩はできるけど演説はクリアが見えない。近代<怪獣<V<喧嘩<演説って感じだなー -- new{10/07-12 (月) 13 49 05};すると俺は逆だな。演説を最近クリアしたけど、ケンカはわけわからん。そして41強グループはだいたい無理 -- new{10/07-25 (日) 22 37 13}; 41に下がってからクリア出来なくなりました -- new{10/06-29 (火) 06 08 39};ごくそつくんの呪いです 恨みです さすがあさきキャラ -- new{10/07-03 (土) 12 48 43};一部の超上級者が42(笑い)と叩いたからですね。 -- new{10/07-03 (土) 12 56 59}; 42(笑)っつっても41弱~中程度のレベルがあるわけじゃなし,レベル変更する必要ないと思うんだよ -- new{10/07-03 (土) 23 25 43}; ↑ 確かに俺もレベル変更しなくてもいいと思う。でも一部の人が降格しろとやたらうるさいし・・・ コアダスと違って演説と喧嘩は降格しても弱にはならないと思うから、19で手芸やDDRなどの42に近い41と一緒に昇格した方がいいと思う。 -- new{10/07-04 (日) 10 12 22}; これはラストが41とは別格の強さだったから42に居たような曲だから降格すべきではなかったと思う -- new{10/07-21 (水) 22 22 20}; 41に下がった連中の方が、42のままのやつらより強いという個人的な感覚 -- new{10/07-03 (土) 14 15 45};近代と怪獣ですねわかります -- new{10/07-03 (土) 14 53 02}; Vのことを言っているなら同意 -- new{10/07-04 (日) 00 49 04}; 味噌土偶と難易度的に大差がなく感じる。んだから42でも41でもいいや。 -- new{10/07-04 (日) 00 58 57}; 近代とVと怪獣だけが下がって、ケンカと演説は放置となるならまだわからなくもなかった -- new{10/07-04 (日) 11 25 55}; 大事なのは曲のレベルではなく自分の腕だと思うんだ -- new{10/07-04 (日) 13 04 04};うん、俺もそう思う。自分がレベル移動によって最高42になろうが41になろうが実力が変わるわけでもないし。 -- new{10/07-12 (月) 02 08 45}; いろんな曲で「さっさと(上のレベル)に行け」ってコメを見るたびにそう思う -- new{10/07-12 (月) 10 57 38}; 譜面は一切変わってない件について -- new{10/07-12 (月) 02 10 58}; あぁ・・呪われたどうすれば・・ -- new{10/06-13 (日) 11 42 59};クロスやってみた? 無理押し耐性が少しあればクリア出来るかも。 -- new{10/06-28 (月) 16 24 55}; なんだこれ、やればやるほど後半できるようになるのに前半がどんどん呪われてく・・・。今まで後半もう少しできれば!だったのに今は前半もう少しできれば!という謎の葛藤。これが演説か・・・ -- (ついでに)41が11曲でそんな感じだから個人的には41でおkかなぁ new{10/06-10 (木) 11 07 11};全く同じ状況になったことがwwアナコンでですが…やりこむと前半の縦連打に呪われますね -- new{10/07-12 (月) 01 45 46}; なんかこの曲のページではこれが42に戻り喧嘩は41のままで、喧嘩のページは喧嘩が42でこれが41と言う声が多いな -- new{10/06-05 (土) 21 41 33};結論=どっちも帰れ -- new{10/06-05 (土) 22 01 46};むしろどっちも残れ。それなら42の数曲を降格させるだけで済む -- new{10/06-05 (土) 22 03 58}; いや俺は42に戻ってもいいと思うな、コアダスみたいに降格しても弱ではないので・・ -- new{10/06-05 (土) 22 08 47}; 降格して強なら逆詐称、降格しても弱なら超逆詐称w -- new{10/06-05 (土) 22 14 19}; ケンカドラムと演説降格したが、ほとんどの人が強だというなでも42のときは42(笑い)と叩かれすぎたからな、一体どうすれば・・ -- new{10/06-05 (土) 22 17 01}; 42だと下から5番目、41だと上から10番目ってところだろう。どちらかというと41 -- new{10/06-05 (土) 22 22 08}; 演説は41だとヒプロ3.5やクラ10と並ぶ41の最上位クラス -- new{10/06-07 (月) 17 35 30}; 41が残り手芸、演説、陣旗(侍は埋めた、土隅と蛇神はまだ解禁してない)の俺からすると、一番クリアに遠くて最難関なのが演説なんだよなぁ。 -- new{10/06-07 (月) 18 00 39}; 個人差でかいんだな。自分にはこれより難しい41がたくさんあるように思えるんだが -- new{10/06-07 (月) 19 07 30}; どっちも帰ってもいいが、一緒に手芸、味噌、土偶、蔵10、3・5も一緒に -- new{10/06-12 (土) 01 14 57}; 先日土隅と味噌を抜けて41残りこれだけになった俺。クリアできる見込みあまりなし。ぶっちゃけ、全体的にふることEXのほうがゲージ残るんだがW -- new{10/06-19 (土) 00 36 37}; 味噌って何だ?! -- new{10/06-19 (土) 13 27 05}; ↑ 味噌はオリエンタルミソロジーのこと -- new{10/06-28 (月) 14 25 05}; これより簡単な42あると思う -- new{10/07-02 (金) 18 05 00}; ↑5 3.5だけ浮きすぎw 3.5は41中だろjk -- new{10/07-28 (水) 13 46 43}; 演説喧嘩が41に下がったのはいいけど近代カイジュウVがなぜ41に下がらなかったのが疑問。この3つも降格すれば妥当だった -- あとは何故倉4が昇格したのか new{10/06-05 (土) 23 20 37};疑問といえば何故ラメントも昇格したかも分からん。 -- new{10/06-05 (土) 23 22 55}; クラ4とほぼ同等のクラ10は上がらなかったし、演説ケンカより弱い近代怪獣Vは下がらなかったし謎が多い -- new{10/06-07 (月) 17 36 54}; ↑判定がクラ4より甘め、終盤回復ありだからじゃね クラ10 -- new{10/06-07 (月) 19 19 15}; 蔵10はさらに軽いゲージだしな -- new{10/06-07 (月) 20 00 08}; 41と比べたら格段に難しいよねこれ。序盤は押し辛いし中盤はラメ並の同時押し発狂が来るしラストはきっちり殺してくるし地力が無いとゲージが地を這って終わりだよ -- new{10/06-19 (土) 15 51 03}; 41唯一の未クリア曲の座を今回も守りとおしたwww できる気がしない。せんごく曲はふること以外埋めたのに、何が足りないのだろう -- new{10/07-25 (日) 08 36 40}; bad28で落ちるのは普通? -- new{10/06-05 (土) 14 47 16};BAD18でも落ちるから普通 -- new{10/06-05 (土) 15 11 03};BAD14逆ボで落とした自分のようなのもいる。 -- new{10/06-06 (日) 23 39 21}; なんか妙に苦手すぎるんだが何が足引っ張ってんだろ?呪いが付くほどやってるって訳じゃないのに道中含めてかなりきつい -- new{10/05-23 (日) 21 27 52};地力不足の可能性を示唆してみる -- new{10/05-23 (日) 21 35 06}; 参考:42:幸子以外埋め(強以外ではフラ、ロボが後のほうまで残った)、適正BPM760~800 -- new{10/05-23 (日) 21 35 07}; この譜面S乱譜面に通ずるものがあるからS乱なれしてみたら?bpm120前後で程よく全体難な譜面がお勧め(ルナティックリールEXとかゴスインダストリアルEXとかジグリミEXとか) -- new{10/05-23 (日) 21 44 23};S乱譜面は同レベルの人並みには出来る・・・と思います。基準が分からんがとりあえず一揆EXは安定してます。 -- ジグリミはクリア済み。今度ルナリとゴスの方もやってみます。 new{10/05-23 (日) 21 59 37}; 一揆が安定しているなら少し趣向を変えてマダーロックEXとか近代絶頂EXとか。両方とも3~4個の無理押し耐性必須だけど発狂耐性は間違いなくつく -- new{10/05-24 (月) 08 02 36}; これとケンカドラムが41にいったのに戦乱が42で登場したのはちょっとな -- new{10/05-14 (金) 22 50 00};42で一番BAD出るから別に構わんよ -- new{10/05-24 (月) 00 19 26};戦乱は余裕でできたけど演説、喧嘩は全然できない。やっぱり戦乱は逆詐欺だと思う。 -- new{10/05-24 (月) 08 03 19}; 戦乱は演説やケンカより難しく感じるんだがなあ -- new{10/05-24 (月) 14 56 31}; 演説のラストは戦乱のどの部分よりも難しいから演説>戦乱 -- new{10/06-07 (月) 17 41 07}; これとケンカドラムが42のとき難易度が逆詐称ではなく、弱としてやってきたのだから19で42に戻ってもいいと思う。 -- new{10/05-14 (金) 21 28 29};確かに41だと強めだけどこれを42に上げるならもっと他にあるだろうって話だなw少なくとも41最強ではないって意見が大多数なはず -- new{10/05-22 (土) 17 18 37};うん、俺も。手芸、蔵10、DDR、デスレゲエ、ピラミッド、ピアノテックが上がるんだったらこれ42でも許す。 -- new{10/05-23 (日) 21 35 09}; ↑手芸、蔵10、DDR、デスレゲエ、ピラミッド、ピアノテックが上がるんだったらこれが42でも許す。とか何様?この6曲が昇格しなければ認めないのか? -- new{10/07-03 (土) 11 36 39}; ケンカはともかく、こいつは上がってくれたほうが個人的にすっきりする -- new{10/05-22 (土) 19 11 29}; メインBPM126かと思って7速使わなかったけど実は適正800くらいなら使った方が楽だね -- new{10/05-13 (木) 01 02 37}; ラスオの階段って亜空間と同じ位の速さ? -- new{10/04-19 (月) 22 30 40};ラスオって誰だよwwという突込みは置いといて、たぶんこっちのほうが速いと思う。というかやり辛い -- 亜空間は安定これ時々落とす者 new{10/04-19 (月) 22 36 05}; でも亜空間を低速プレイで演説ラストの練習になるかもね -- 亜空間は安定これ時々落とす者 その2 new{10/04-19 (月) 22 44 57}; 亜空間の階段と性質違うがこっちのが早い。ってか何故下がった -- 略その3 new{10/04-20 (火) 08 50 03}; 階段に入る前にラメントやグロッソとほぼ同等の密度の配置を回復ほぼ無しで乗り切らないといけないのも辛い -- new{10/04-27 (火) 15 32 32}; 嘆きの階段 -- new{10/04-27 (火) 16 38 33}; 実は「大階段(1)」→「折れ曲がり階段」→「大階段(2)」→「おまけの小階段」の4つはそれぞれテンポが違う -- new{10/04-27 (火) 16 53 19}; ラオスなんぞそれ? -- new{10/05-19 (水) 10 23 57}; 19て42に上がり直すと思うな -- new{10/04-18 (日) 09 51 38};ねーわ -- new{10/04-18 (日) 10 37 18};いや、ありえるな -- new{10/04-18 (日) 12 49 47}; あり得るだろ -- new{10/05-07 (金) 23 20 38}; DDRと一緒に42に帰っても良いと思う -- new{10/04-18 (日) 13 05 07};ピアノテックも一緒につれてけ -- new{10/04-19 (月) 22 22 22}; 手芸も忘れるな! -- new{10/04-19 (月) 22 28 26}; 手芸は41のボスでいて欲しい -- new{10/04-19 (月) 22 57 57}; これとDDRとクラ10は42でいいと思う -- new{10/04-29 (木) 13 25 42}; ケンカドラムもできれば連れて行って -- new{10/05-03 (月) 15 57 31}; デスレゲーもお願いできますか? -- new{10/05-22 (土) 17 15 50}; 手芸ってシュゲイザーのことですか? -- new{10/05-22 (土) 17 18 58}; いや、デスは41でいいと思う -- new{10/06-19 (土) 13 25 59}; 個人的に唯一の逆詐称だったから帰らないで欲しい -- new{10/04-19 (月) 22 57 00}; Vを差し置いての降格は意外だったけど、なんか次作も41な気がする。 -- new{10/04-19 (月) 23 52 19}; これよりもケンカを42に上げるべき -- new{10/04-20 (火) 06 36 16}; 正直お前ができないだけだろと -- new{10/04-20 (火) 07 53 02}; 近代V怪獣に比べたら強いので41にいると違和感がある。近代V怪獣が41に降格なら演説も41のままでいいが。 -- new{10/04-27 (火) 04 51 58}; どう考えても近代の上位互換にしか思えないのに何故これだけ降格したんだろう。近代安定して大分たってからラス前にフィーバーいけるようになったわ -- new{10/05-19 (水) 09 32 35}; サイガガが安定してこれが安定しないんだけど -- new{10/02-22 (月) 17 55 00};サイガガ安定とまではいかないものだけどこれのクリア率の低さは異常・・・ピアノテックとはるくらい。きっと安定歯肉神が・・・ -- new{10/03-24 (水) 12 18 14}; この曲は初クリア難易度ならVや怪獣より上だが、一度出来てしまえばこれらより楽に感じるんだな。まあ近代はこれと同じく「一度出来れば」タイプでこれより簡単だが・・・ -- new{10/02-19 (金) 00 51 10};前者も無いかと...。 -- new{10/02-19 (金) 02 10 23};ん?Vや怪獣より先にクリアした人は少ないと思うけど・・・。んで怪獣はラスト前の小階段とか押しづらくてひやひやするし、Vは後半の難所のせいでいまだ運ゲー -- new{10/02-19 (金) 03 05 50}; 自分昨日これクリアしたがVと怪獣は未だに出来ない Vは終盤の取りづらいやつ、怪獣はラストの4つ押し階段で死ぬ -- new{10/03-15 (月) 10 21 18}; Vはラスト適当に餡蜜すれば残るよ。カイジュウは…気合いで取るしかないw -- new{10/03-15 (月) 11 06 34}; Vは指押し得意なせいか余裕で最初に埋まった。てか同時押し譜面じゃないから比較にならんだろ -- new{10/05-19 (水) 09 34 09}; 演説は安定が難しい譜面と言う印象。怪獣に比べたら後半の難所の区間が長いし、Vや近代と違って難所で崩れたら終わりなのでプレッシャーがきつい。 -- new{10/02-21 (日) 02 34 26};Vも難所で崩れやすいだろww -- new{10/02-21 (日) 03 03 09}; Vは演説に比べたら難所の後の回復は長いのでまだ立て直しやすい。難所のすぐ後が何故かVHより簡単だったりするし。 -- new{10/02-21 (日) 22 01 09}; 交互連打が苦手な自分には回復地点などない -- new{10/03-17 (水) 21 56 37}; これの場合、×一度出来れば楽 ○一度出来ればもうやりたくない -- new{10/02-21 (日) 22 55 43}; 発狂は41強クラスでラストは42!ていうかラストないわ~未だに落とす。 -- new{10/03-24 (水) 12 54 20}; ラストの階段は楽勝なんだよ・・・発狂がどうしてもできん -- new{10/02-14 (日) 16 44 10};最後の最後はスペースワルツよりも短いしなぁ -- new{10/02-14 (日) 17 24 01};ソフラン幅もないし -- new{10/02-14 (日) 17 25 00}; そりゃ腐っても元42だからな。41感覚で行ったらフルボッコだろ -- new{10/02-14 (日) 18 58 19}; ようやく越せたぞ・・・ -- 41レベ3曲目埋め new{10/02-20 (土) 17 25 10};ようやく? そういうのは3曲目とは言わない。同じ回数だけ他の曲もやらないとな。 -- new{10/02-21 (日) 22 50 25}; 確かに階段得意なら適性41でもラストは十分さばける。クラ7Hの前半の方が罰出るくらい。 -- new{10/02-21 (日) 03 27 33}; あの発狂は普通にラメントと同レベルだと思う -- new{10/02-22 (月) 01 30 08};なん・・・だと・・・ -- new{10/02-22 (月) 08 34 35}; そしたらどうして降格した?w 落ちる要素ねえじゃねえかwww -- new{10/03-24 (水) 12 16 11}; 怪獣や近代やVより落ちる要素が少ないのに降格したのは正直謎としか言えない -- new{10/03-27 (土) 04 47 23}; 元42でも昨日やったら終盤のゴッチャリしたとこでゲージ0にされたよ タチ悪いなぁ… 何気に… -- ____ new{10/02-12 (金) 08 12 24}; 俺も正規で歯がたたないのに鏡で何回かやったらあっさり出来た!!ナニヒとヒルビリーなんていくらでもやるから蔵10くれ -- new{10/02-06 (土) 12 08 30};ヒルビリーくれぇぇぇぇぇw蔵10は乱埋めでも良ければ…wwていうか乱ダメだと埋まらないのたくさんある(汗 -- new{10/02-06 (土) 14 22 36}; 低速耐性があれば俺と似てるなぁ。ナニヒとヒルビリーは最後まで残ったよ。アドバイスとしては諦めろ! でもナニヒはミラーがいいかも。 -- new{10/02-22 (月) 08 31 55}; 鏡入れたらあっけなくクリアした。……4年越しの夢、あっさり達成(アドベンチャー時代から挑戦し始めたので) -- new{10/01-28 (木) 18 44 42};俺のオイ0討伐の夢はも7年越しになろうとしている・・・ -- new{10/01-28 (木) 18 48 19};
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7448.html
前ページゼロと損種実験体 朝。ラグドリアン湖のほとりで一夜を過ごした一行は、もそもそと起き上がる。 これからもう一度、水の精霊と交渉をしなくてはならないモンモラシーは緊張でよく眠れなかったので眼をこすり。朝の弱いルイズやキュルケは、しかし野宿に慣れてないので二度寝をしようとは思わず、寝不足の頭を揺らしながらも起き上がり。慣れているらしいタバサは、しかし眼を開ければアプトムの顔が見えるという状況で寝るのは精神的疲労が激しく、よく眠れず、やはり憔悴した顔であり。ただ一人、アプトムだけが疲労の色の見えない顔で立ち上がる。 もう一人、元気な顔をしたギーシュがいるが、こちらはすぐにアプトムの毛布に潜り込もうとするので縛り上げられて転がされているので起きることができない。 「ああ、これがきみの愛なんだねアプトム。でも放置プレイは、あんまり楽しくないよ」 そんなことを言ってるギーシュを、汚物を見るような眼で見るタバサは、昨夜はこんなのにやられかけたのかと、密かに落ち込み自分もまだまだだなと反省する。 そんなこんなで、起き出した彼らは朝食を済ませると、またモンモラシーが昨日と同じように使い魔のロビンを湖に放して、水の精霊を呼んだ。 「水の精霊よ。もうあなたを襲う者はいなくなったわ。約束どおり、あなたの一部をちょうだい」 その言葉に答えてか、水の精霊である水の塊が震え、その一部がはじけてモンモラシーの持つ瓶に飛び込んだ。 それこそが、水の精霊の涙である。 それで用は済んだとばかりに湖に沈もうとした精霊に、慌てたモンモラシーが呼び止め話しかけると、水の精霊は沈むのを止め、昨日のようにモンモラシーの姿を写しとったカタチになり、なんだ? と問いかけてくる。 「どうして水位をあげてるの? できればやめてほしいのよ」 できることがあれば力になるという言葉に、精霊はおそらくは悩んでいるのだろう。グネグネとモンモラシーを模した体を動かし、しばらくして答えてきた。 「お前たちに、任せてもよいものか、我は悩む。しかし、お前たちは我との約束を守った。ならば信用して話してもよいことと思う」 そうして精霊が語ったのは、盗まれた秘宝を探しているとの答え。 水の精霊には長く守り続けてきた秘宝があった。それが盗まれたのは、おおよそ二年前。それを取り返すことを決めた精霊は、水を増やし世界を沈める事にした。 水は、この精霊にとって体の一部のようなもの。水が世界を覆えば秘宝は自分の手に戻る。そんなシンプル且つ迷惑な思考がそうさせたのだ。 「それなら、わたしたちがその秘宝を取り返してくれば、水を増やすのをやめてくれるのね?」 横から、というかモンモラシーの後ろから口を出したキュルケに、精霊は頷いたつもりなのだろう体を震わせる。 「それで、その秘宝ってなんなの?」 「アンドバリの指輪。我と共に、時を過ごした指輪」 「なんか聞いたことがあるわ。たしか、水系統のマジックアイテムで偽りの生命を死者に与えるという……」 モンモラシーの呟きに、その通りと精霊が続ける。 「誰が作ったものかはわからぬが、お前たち単なるものがこの地にやってくる前から存在した、旧き水の力」 「誰が盗っていったのか、手がかりはあるか?」 アプトムの問いに、精霊は答える。曰く、その者たちには風の力を行使する者がいたと、その中の一人がクロムウェルと呼ばれていたと。 「アルビオンの新皇帝の名前じゃない」 呟いたキュルケに、他の皆が注目するが、言った本人はただの同じ名前ってだけの別人かもしないけどね。と付け加える。 「それで、偽りの生命を与えられた者は普通の人間と違うところがあるのか?」 あるのなら、それが手がかりになるかもしれないと問うアプトムに、蘇った者は何者であれ指輪を使った者に従うことしかできなくなると答えが返ってきた。 「嫌なマジックアイテムね」 呟いたのはキュルケ。死後のこととはいえ、心を縛られ他人の命ずるままに動く操り人形にされるなど、奔放なツェルプトーである彼女には受け入れられない話である。 「わかったわ。その指輪はわたしたちが取り返してくる。だから、水を増やすのを止めてちょうだい」 放って置けば精霊が世界を沈めるつもりだと聞いては、どの道やらないわけにはいかない約束である。それにとルイズは思う。 死者に偽りの命を与え、思いのままに操るなどという人の尊厳を踏みにじるマジックアイテムは人の手にあるべきではないのだ。 その想いが通じたのか、精霊はルイズの言葉を受け入れ水を増やすことを止めると約束する。 そうして、今度こそ水の精霊が湖に沈んでいこうとしたとき、タバサが精霊を呼び止めた。 「水の精霊。あなたに一つ聞きたい。あなたはわたしたちの間で、『誓約』の精霊と呼ばれている。その理由が聞きたい」 「単なる者よ。我とお前たちでは存在の根底が違う。ゆえにお前たちの考えは我には深く理解できぬ。しかし察するに、我の存在自体がそう呼ばれる理由と思う。我に決まったかたちはない。しかし、我は変わらぬ。お前たちが目まぐるしく世代を入れ替える間、我はずっとこの水と共にあった。変わらぬ我の前ゆえ、お前たちは変わらぬ何かを祈りたくなるのだろう」 その答えに何を思ったのかは、本人にしか分からない。だけど、タバサは頷くと眼を閉じて両手を合わせた。 それは、静謐にして神聖さを感じさせる姿で、ルイズも同じく眼を閉じて誓いを立てることを決める。 そうして、キュルケも、モンモラシーも、ギーシュも二人に倣う。 アプトムだけが、黙って立っていたがそれに文句を言うつもりはない。 ルイズは誓う。必ず立派なメイジになってアプトムを元いた世界に帰すと自分自身に約束する。 他の三人が何を誓っているのかなど彼女は知らない。知ろうとも思わない。 ただ、ギーシュが何を誓っているかだけは分かる。 何故なら、「ぼくは一生アプトムを愛し続けることを誓うよ!」などと叫んでいるから。 とりあえず、モンモラシーと二人で「誓うな!」と殴っておいた。 アンリエッタは夢を見る。 それは幸せな過去の夢。愛した男性と初めて出会った日の夢。愛を語り合い誓い合った日々の夢。 見ても虚しいだけの、ただの夢だ。 だけど、それくらいは許されていいではないか。ただ一つの恋を失い、王などという重責を背負わされた自分には、もはやそれくらいしか縋れるものがない。それすら取り上げられたなら、もはや立ち上がる力すら残らない。 そうして、ふとアンリエッタは思う。 彼女は、かつてウェールズとの密会で、二人の永遠の愛を水の精霊に誓約をすることを求めたことがある。だけど彼は、はっきりとは愛を誓ってくれなかった。 彼に送り、後にルイズに回収してもらった恋文の中で始祖ブリミルの名の元に愛を誓ったりもしたが、それも彼女の一方的なものである。 ウェールズは、本当は自分を愛してくれていなかったのではないだろうか? それは考えることに意味のない疑問である。だけど、心弱い今の彼女は、そんな埒のないことで自分の心を追い詰めてしまっていた。 あるいは、彼女にも悩みを話せるような心許せる誰かが傍にいてくれたなら、もうすこし健全なことを考えられたのかもしれない。 だけど、そんな人間はいない。彼女が心許せるのは、おともだちのルイズただ一人で、その友人は気軽に呼び出していい相手ではない。彼女には多大な迷惑をかけてしまっているし、自分より彼女の抱えるその秘密の方が、他の者に知れてはいけないのだから。 そんなことを考えていた時であった。部屋の扉がノックされたのは。 「ラ・ポルト? それとも枢機卿かしら? こんな夜中にどうしたの?」 物憂げに問い、ガウンを羽織るとベッドから降りて扉へ向かう。 だけど返事はなくて、だから彼女は扉の前まで来ても、それを開けようとはしない。 「誰? 名乗りなさい。夜更けに女王の部屋を訪ねるものが、名乗らないという法はありませんよ。さあ、おっしゃいな。さもなければ人を呼びますよ」 「ウェールズ殿下に仕える者です」 誰何の言葉に答えたのは、若い男の声。聞き覚えのない男性の声は、その言葉だけで彼女の心を縛る。 「それは、どういう意味なのでしょう……?」 震える声で問いかけた言葉に、扉の向こうから聞こえる声は告げる。ウェールズは生きていると。そして、アンリエッタに会いたがっていると。本人が来なかったのは、ワルド子爵――彼女自身が送った裏切り者に負わされた傷のせいだと。 男の言葉を信じるに値する根拠はない。だけど、本当だったなら、裏切り者を送り出してしまった自分は、罪を償う機会を与えられたということ。そこに縋りたいと思う自分を彼女は自覚する。 だが、彼女が唯一信頼する友人は、はっきりとウェールズは死んだと言った。それを信じるなら、男の言葉は偽りでしかない。 どうすればいい? どうすることが正しい? 自分はどうしたい? そんなふうに自問する彼女は気づかない。扉の向こうの男の狙いは、その自問であると。彼女の他への注意力を逸らすことであったのだと。 頭の中がぼやける。体の力が抜ける。そして、膝から崩れ落ちようとする彼女の体を支える誰かの両手。 窓は、いつの間にか開け放たれ。彼女の部屋には、ローブを纏った数人の男たち。アンリエッタの意識を逸らし、その隙を狙い入り込み彼女に眠りの魔法をかけた者たち。誰が知るだろう。それが、クロムウェルの送った死人たちであるなどと。 女王、誘拐の報は、すぐに衛士たちの間に伝えられた。 王宮から、誰にも知られずに女王を浚うなど、元々不可能なことである。 だけど、失敗とも言えない。目的を果たし素早く逃げ出した誘拐犯たちに追いつけたのは、魔法衛士隊の中でも、もっとも足の速い幻獣を騎馬とするヒポグリフ隊のみ。そして、彼らは、街道に屍を晒すことになる。 彼らとて弱いわけではない。だが、誘拐犯たちの手にアンリエッタがいる以上、女王を巻き込むような魔法は使えない。そして、死人は死なないのだ。 衛士隊の火の玉が爆裂し誘拐犯の女王を連れていない者を馬ごと吹き飛ばす。風の刃が他の者の首を切り裂き、氷の槍が更に別の者の胸を刺し貫いた。女王を連れた敵の馬に稲妻をぶつけもした。誘拐犯たちは、まるで避けるということを知らないのかのように簡単に攻撃を受けていき十騎いた彼らは、次々と倒れていった。 それで、衛士たちは勝利したと油断した。 それは、大きな間違いであり、致命的な油断。切られたはずの者は、それがなかったかのように、杖を振るった。刺されたはずの者は、突き立てられた氷の槍をそのままに呪文を唱えた。 油断をつかれた衛士たちは、緊張を取り戻すより前に恐怖する。さしもの彼らも、殺しても死なない者を恐れぬ胆力はない。 そして、死ぬ者と死なぬ者。二つの戦いには決まりきった結果しかなかった。 魔法衛士隊を全滅させた彼らは、何事もなかったように、今だ眼を覚まさないアンリエッタに改めて手を伸ばし、その右腕を風の刃に切り飛ばされる。 「なんのつもりだ? ワルド子爵」 そう言って向けた視線の先には三つの人影。ワルド、フーケ、包帯の男である。 「なに、アンリエッタを閣下の元に連れて行く役目。この僕が勤めてあげようと思ってね」 不敵に笑うワルドに、死人たちは納得すると共に理解する。 そして、思う。愚かなことをと。 死人たちには、手柄がどうとかいう発想がない。 当然だ。彼らには、欲望も信念もない。あるのは、命令を忠実に果たさなくてはならないという道具らしい衝動のみ。 だが、生前の知識はあるし、生きた人間がどう思考するかを理解する知性がある。 だから、分かる。ワルドが、アンリエッタの誘拐を自分の手柄にしたがっていることを。そして、そのために自分たちの口を塞ぎたがっていることも。 彼らは死人。すでに命がなく、ない命を守ろうという感情もない。だから、ここで処分されるとしても、そのことに不満はないし下手人に対する恨みも生まれない。 だけど、道具である彼らには役目がある。その役目を果たさずに消えることは許されない。 杖を抜いたのは同時。だが、それを振るい魔法を発動させたのはワルドの方が先。閃光の二つ名は伊達ではない。万全に程遠い体調でも、早々遅れは取らない。 稲妻が走り、死人の一体を貫く。もちろん、そこで動きを止めたりはしない。魔法を放った直後ワルドは移動し、それまで立っていた位置に竜巻が生じる。一騎打ちではないのだ。一体を倒したくらいで油断はしない。 両者の実力には大きな隔たりがあったのだろう。ワルドの魔法は全てが死人に直撃し、死人たちの魔法はワルドを捕らえられない。 だが、そんな優位も、ほんのわずかな間のこと。お互いの数の差は実力差を埋めるには充分なものであったし、偽りの生命を与えられただけの死人たちは幾度ワルドの魔法を受けても倒れず数を減らさないのに対し、傷が完治していないワルドは動き続けているだけで消耗していくのだ。 「それで、あんたはどうするんだい?」 ワルドと死人が戦闘を始めてすぐの、フーケからの問いかけに答えるように彼は剣を抜く。 「おっ、ついに俺を使ってくれるのか? 今度は、前みたいに途中で捨てないでくれよ!」 インテリジェンスソードの軽口というか、切実な懇願にも聞こえるそれにも言葉を返すことなく、ここでは『ソムルム』と名乗っている男。 包帯の男、アプトムは、ワルドと死人が杖を交える戦場へと飛び込んでいく。 彼にとって、ワルドの手柄がどうのというのは、それほど興味のある話ではなかったが、虚無の系統を使うと自称するクロムウェルとの繋がりが他にない以上、ここでワルドを見捨てるという選択はありえない。 相手は殺しても死なないようだが、そんなことで恐れはしない。不死身の肉体という意味では、彼も似たようなものなのだから。 そして、フーケはため息を吐く。 彼女としては、アプトムにはワルドを見捨てて欲しかったのだ。さんざん煽っておいてなんだが、傷ついたワルドでは死人たちには絶対に勝てないだろうと彼女は判断していた。 というか、ワルドにはここで死んで欲しいと願ってさえいた。そうすれば、レコン・キスタとも縁が切れて妹の所に帰れるのにと思っていたのだが、当ては外れた。 こうなっては、自分も参加しないわけには行かない。死人と戦うなど冗談ではない話だが、ここで黙って見ていて後で文句を言われるのも困る。 アプトムが介入した以上、ワルドに負けはない。このバケモノが、死なないだけの死人に倒されるようなら苦労はしないのだ。 それは、閃光の二つ名を持つワルドよりも速く走り、死人を切る。彼が持つのは、切れ味など期待できぬ錆びた片刃剣。それを使い、力づくで敵の肉体を断絶する。 不死身だからどうしたというのだ。死なぬのなら動けなくなるまで切り刻めばいいだけのこと。 女が唱える呪文は、ゴーレムを作り出す魔法。生み出されたのは、三十メイルの巨大ゴーレム。それが拳を振るい死人を叩き潰す。 死を恐れず痛みを感じぬ死人たちは、回避よりも攻撃を優先し、ゆえにこちらの攻撃を受けて傷ついていく。 バラバラに切り刻まれた者、潰され全ての骨を砕かれた者、それらは死ぬことはなくとも動けなくなり、戦線から脱落していく。そのはずであった……。 「なんとかならないかい?」 ゴーレムに自身を守らせ、なおかつアプトムの後ろに隠れながらフーケが問う。 本人に、体術の心得がないわけではないが、相手はかつて百倍以上の兵力のレコン・キスタ兵を相手に、自分たちの十倍の死傷者を出させたアルビオン王党派の兵であった者たちである。更に今では死を忘れた存在になったとあっては、白兵戦などやりたくはない。 それはさておき、困ったなと思う。ただ死なない者になったというだけなら、倒すこともアプトムの力を借りれば簡単とは言わないまでも不可能には遠いことのはずだったのだが、相手は死なないだけでなく傷を負ってもバラバラに解体されても、すぐに再生してしまう。 それでも、数が少なければどうとでもなったのだろうが、相手は十人もの騎士である。倒し動けないほどに傷つけても、次の相手と戦っている間に再生されてしまう。 彼ら三人は強い。が、だからと言って、死人たちも弱くはないのだ。一瞬で全員を倒してしまえるわけでもなく、再生の時間を与えてしまう。 何とかしてくれよというのが、フーケの感想だがアプトムだって困っていないわけではないのだ。例えばここで獣化すれば労せずして死人たちを全て倒せるのだろうが、その後が問題である。単に死なない相手ならバラバラにした後埋めてしまえば済むのだろうが、この様子では埋めた後で再生して帰ってきかねない。 それでは意味がないのだ。ワルドが手柄欲しさに死人たちを襲ったなどとクロムウェルに知られるわけにはいかないのだから。 それ以前に、ワルドに獣化を見られるのも都合が悪い。 では、どうすればいい? そう自問する。自分はともかく、フーケやワルドは長く戦いを続けていればいずれ疲労し動けなくなる。折り悪く雨まで降ってきたようだし、このままでは、それは遠い先のことではないだろう。 そんな時、「あー」と緊張感のない声を上げる者があった。 「思い出した。あいつら、随分懐かしい魔法で動いてやがんなあ……」 突然、何を言い出すのかと、チラリと自身が右手に握った剣を見るアプトムに、デルフリンガーはもっと注目してくれよと言わんばかりに大きな声を上げる。 「あいつらは、俺と同じ根っこの魔法で動いてんのさ。四大系統とは根本から違う『先住』の魔法さ」 「『先住』だと? 『虚無』ではないのか!?」 思わず振り返り、叫び声を上げてしまうワルドに死人が襲い掛かるが、それはフーケが唱えた錬金により開けられた穴に足を取られ、バランスを崩したところを蹴り飛ばされる。 「こんなのが『虚無』のわけねーだろ。仮初めとはいえ命を与えるとか、心を操るとかは、どう考えたって『水』だろ? そこんとこは、『先住』も四大系統も違わねーぜ」 「馬鹿な! では、閣下は先住魔法の使い手だったと言うのか!?」 「いんや。どう考えても、マジックアイテムの力だろ? ほら、あのおっさん。なんか指輪してただろ? ずっと気になってたんだけど、ありゃあ水の先住魔法が込められたマジックアイテムだぜ」 そういうことは、早く言え! そう思ったのはフーケであり、アプトムである。 ワルドは、にわかには信じられないのだろうが、この期に及んで「証拠はあるのか」と往生際の悪いことを言ってくる。 「証拠ったってなあ。燃やしてみればわかるだろ。あいつら水で動いてるから火に弱いぜ」 簡単に言うな。 と思ったのはフーケとワルド。 二人は土のメイジと風のメイジである。 火の魔法が使えないというわけではないが、得意としてはいない。少なくとも、今戦っているレベルの敵を焼き殺せるような魔法は使えない。 どうしろと? そう思ったフーケは、険しい顔で剣を睨んではいるが、自分達のように途方にくれたような顔はしていないアプトムに気づいた。いや、包帯でよく分からなかったけど、雰囲気でそんな気がした。 「ひょっとして、あんたなら何とかできるのかい?」 できたら、ありがたいような嫌なような複雑な気持ちで聞いてみたら、できなくはないと答えが返ってきた。 ええ、そうでしょうとも。あんたにできないことなんてないわよね。だったら、さっさとやっとくれ。 ヤサグレた想いを込めて睨みつけてやるが、アプトムとしては、その手段を取っていいのか悩むところである。 クロムウェルの『虚無』はペテンであったわけだが、だからと言って、彼が『虚無』に関する情報を持っていないという事にはならない。 彼の持つ指輪が自分にとって役に立たないものであっても、手に入れる過程で自分の欲しい情報を得なかったとはかぎらない。 もちろん、その可能性が低いことは理解している。だが、他に当てがあるわけではない。 となれば、クロムウェルに繋がる糸であるワルドに不信感を持たれる行動は慎んだほうがいいのではないだろうか? ただでさえ色々と疑いの目で見られているのに。 それが、アプトムの考えである。その結果、ワルドが命を落としたとしても、それは仕方がないことである。 ワルドに不信感を持たれることと、ワルドが死ぬことは、どちらも彼を利用出来なくなるという意味でアプトムにとって同じことなのだから。 そこに、フーケの安全への配慮はない。アプトムにとって、彼女はワルドと同じで自身の目的のために必要だというだけの存在であり、しかも不可欠というわけではない。安全を保障してもらおうと考える方が、間違いというものである。 だめだ。このままじゃ、殺される。他の誰でもない。アプトムに殺される。今まで、自分の生命を脅かしているのはワルドだとばかり思ってたけど、それは勘違いだった。このバケモノは人の命なんとも思っちゃいない。 そう考えるフーケは正しい。現在のところ、彼が打算なしに守る対象があるとすれば、それはルイズとシエスタくらいのものであろう。ルイズに対しては打算が大きいが。 だから、アプトムに守ってもらいたければ、自分がアプトムに対して価値があることを証明しなければならない。 こんなことなら、ワルドとアプトムが死人と戦闘を始めた時に逃げておけばよかったと後悔するが、もう遅い。だから彼女は、その情報を口にする。本当なら誰にも話すつもりのなかったことを。 「ああ! もうっ、『虚無』のことなら、私が教えてやるよ! こいつらを片付けたら知ってることを教えてやるから、何とかしておくれ!」 自棄になって上げた叫びに、アプトムだけでなくワルドや死人たちまでフーケを注目するが知ったことではない。この言葉を聞いた者たちは、全て始末してもらえばいいのだ。 急な言葉に、どういうことかと問いかけてくるアプトムに、彼女は一人『虚無』と思われる魔法を使う者を知っていると答える。 ただし、それは自分にとって大切な存在で、だから多くの人間に知られるわけにはいかない。 その言葉の意味を、アプトムは理解する。 この情報を得た他の者を生かして帰すな。そういうことなのだ。そして、それは彼の自分の正体は隠すべきという方針にも合致する。 だから、彼は獣化する。死人たちを焼き尽くす能力を持つ獣化兵の姿に。 そこに現れたのは、二足歩行するサイを思わせる巨漢の怪物であった。 この場で、それを見て驚かなかった者はいない。死人である騎士たちもである。 見た目には、ただの初めて見る少し強そうな亜人程度である。十人もの死なぬメイジの敵足り得ない。だが、何かが違うのだと彼らは動物的な本能で感じとった。 そして、それはフーケも同じようなものである。アプトムが変化すると知っていた彼女ではあるが、状況に応じて獣化する姿を選べるという事実までは知らないのだから当然であろう。 アプトムが、融合捕食を果たした者の中に、ダーゼルブという名の超獣化兵がいる。 全ゾアノイド中最強の筋力を誇るその姿になったアプトムは、死人たちの中に飛び込み超重量のトラックでぶつかったような衝撃で撥ね飛ばし、倒れた一人に向かって口を開き大きく息を吸う。 おそらくは、不吉なものを感じたのだろう。その死人は身構えはしたが、しかし自身がすでに死なぬ存在である事に過信していた。 だから、その結果は必然。怪物の口から吐き出された超高熱の火炎は一瞬にして、死人を焼き尽くし黒い炭に変える。 もちろん他の死人たちも、その業火に驚きはしたが、黙ってみていたというわけでもない。体当たりの一撃を喰らわなかった者たちが杖を振るい呪文を唱え、竜巻や風の刃で怪物に攻撃を加える。 だけど、それは意味を成さない行為。今回アプトムの獣化したこの姿の持つ防御力は、メイジの魔法程度が通じるレベルのものではない。 また、傷つけられたとしても、アプトムには死人たちをも上回る再生能力があると知れば、それは悪夢のような光景であっただろう。 そんなことを知らぬ死人たちは、それでも口から吐かれる炎にさえ気をつければ死なぬ自分たちに敗北はないと信じる。 しかし、それも間違いだ。ダーゼルブという獣化兵には、全身から超高熱線を放つ能力も有する。それが、どれほどの威力を持つのかアプトムは身をもって知っている。獣化していない状態であったとはいえ、彼を撃退した程のものなのだ。たかが、死人を焼き尽くすなど造作もない。 そうして、死人たちは焼き尽くされる。ただし、アプトムにも一つ誤算があった。この形態は機動力に劣る。もはや、ワルドたちを倒すこともアンリエッタを浚うことも叶わぬと悟った死人の何人かが逃走を図り、別々の方向へ向かった時、彼には、その全てを追うことが叶ず、結果として一人の逃走を許してしまったのである。 かくて、クロムウェルの元に、ワルドの裏切り、クロムウェルの『虚無』のペテンを彼らが知ったこと、そしてフーケの持つ『虚無』に関する情報がもたらされることとなる。 もっとも、今この場において彼らには、先に考えなくてはならないこともある。 もはや、アプトムにとって必要のない存在に落ちたワルドと、今だ気絶したままのアンリエッタである。 ワルドに関しては、問題ない。彼の存在は、元々アプトムにとって大して重要な人間ではないのだ。ここで始末してしまえば済む。別に、 アルビオンでのことを根に持っているわけではない。念のため。 だが、アンリエッタのことはどうする? こちらのアプトムにとって、アンリエッタはアルビオンに行く原因になった少女という以上の意味のないどうでもいい存在である。だが……、 アンリエッタは夢を見る。 ここしばらくの間に、彼女が見るのは常に愛する男性の夢。ウェールズの夢である。そして夢の中の彼女は三年前の14歳の頃の姿。それが、ウェールズに恋し逢瀬を重ねた時の年齢だったから。彼女が見るのは、その頃の夢だから。 だけど、今この時だけは、彼女は17歳である今の姿をしていた。そして、ウェールズも。 それが何故なのか。と考えるよりも早く不吉なものを感じた彼女は耳を塞ぐ。だけど、ウェールズの言葉は耳ではなく心に響いて届く。 「お別れを言いにきたよ」 「嫌です。聞きたくありません」 いやいやをするように首を振る。これは自分の夢であるはずだ。ならば、見るのは幸せなものでもいいではないか。 そんなアンリエッタの我が儘に、ウェールズは困ったような顔をする。 「分かっているんだろう? ぼくはもう、死んでいるんだ」 「やめてください! わたくしには、夢を見ることも許されないというのですか!」 「そんなことはないよ。夢を見ることは悪いことではない。だけど、過去の夢に耽溺してはいけない。見るならば未来の夢を見るべきだ。そんな風に未来を否定するきみを残しては、安心して眠ることができなくなる」 「それで、いいではないですか! ずっと、わたくしのそばにいてください!」 「ぼくは、もうどこにもいないよ。もちろん、きみのそばにもね」 寂しそうに笑い、ウェールズは続ける。 「きみは、ただ何も見ていないだけなんだ。もちろん、ぼくのこともね」 「そんな! わたくしは、あなたを見ています。いつだって、あなただけを見ています!」 「それは違う。アンリエッタ、きみはね、ただ逃げているだけなんだ。現実から眼を背けて思い出に浸って、自分だけしか見えていない」 「それの何が悪いんですか! 誰も、わたくしを見てくれない! 王宮の者たちは、わたくしをお飾りの女王としか見てくれない。民は、わたくしの苦労も知らないで気軽に奇蹟を求めてくる。母さまも、わたくしの幸せを決めつける。あなただって、わたくしを置いて……、わたくしを捨てて勝手に逝ってしまったではありませんか!」 それが、アンリエッタの本心。 とっくに分かっていたのだ。自分が自身をしか見ていないことも、そんな自分が誰かに愛されるはずがないことも。 アンリエッタが欲したのは、自分を愛してくれる誰か。王女だとか、そんなフィルターなしに自身の心を見てくれる誰か。だから、彼女はウェールズに恋をした。彼が自分を見てくれたと信じたから。 だけど、結局は彼も彼女を見てくれてなどいなかった。そうでなくて、自分の思いを踏みにじって命を捨てるはずがないではないか。 そんな彼女にウェールズは、ある事実を告げる。 「誰もと言ったね?」 「ええ」 「では、ミス・ヴァリエールもかい?」 それは、アンリエッタの命により、死地となるかもしれないアルビオンに赴いた少女の名。 「それは……、王女としての命令だから……。それに、この国の命運をかけた使命だったから……」 「本当に、それだけの理由だったと思っているのかい?」 責めるような問いに、アンリエッタは、うつむき答えられない。 本当は、分かっていたのだ。彼女だけは自分を見て、その心を守るために行動してくれたのだと。 いや、母であるマリアンヌにしても、娘の心を見ていなかったわけではない。そのことをアンリエッタは理解している。ただ、認めたくなかっただけなのだ。自分の言い分が、ただの我が儘だということを。 「アンリエッタ。きみにお願いがある」 「なんですの?」 「幸せになってくれ」 「あなたを失い、もはや生きる喜びをもてなくなった、わたくしがどうすれば幸せになれると言うのですか?」 「ぼくのことを忘れればいい。きみは、若く美しい。ぼくのことなど忘れてしまえば、すぐにでも新しい幸せを掴めるよ」 それだけを言って、自分の役目は終わったとばかりにウェールズは消える。 「意地悪な人」 小さく呟き、アンリエッタは涙をこぼして眼を閉じる。そして、もう一度眼を開けた時、彼女は夢から覚めるのだ。 アンリエッタが眼を覚ました時、最初に見たのは自分を抱き起こしている男の姿。その顔が、ルイズの使い魔のものだとすぐに気づけなか ったのは、彼女がその男を、ルイズの命令で動く強力な亜人だという記号的な認識でしか見ていなかったからである。 だから、最初アンリエッタはルイズもいるのではないかと思い。しかし、親友がいないことに気づき、男に問いかける。 「あなたが、わたくしを助けてくださったのですか?」 「そうなるな」 そうですか。とアンリエッタは礼を言い。では褒美をと思うが、男は首を振る。 彼の望みは、ここで会ったことをルイズに知らせないこと。それだけである。 だが……、っとフーケに顔を向ける。 「お前は、何か必要か?」 「貰えるものなら何でも貰う。って言いたいところだけどね。私は盗賊だよ。褒美を貰いに行って、そこで衛兵に囲まれて牢獄行きとか御免だね」 盗賊? そう思って、見た先にはフードで顔を隠した女。そして、もう一人。 「ワルド子爵!? 何故ここに!」 それは、彼女から愛する男を奪った憎き仇。親友のルイズを裏切り、その命を奪わんとした卑劣な男。それが、何故こんなところにいるのか。 「女王さま。あんたを、かどわかしてここに連れてきたのは、レコン・キスタの騎士だ。それで、ワルドはレコン・キスタの兵。後は、分かるだろ?」 「つまり、彼もあの騎士の中にいて、わたくしをレコン・キスタに連れて行こうとしていたのですね?」 それは、質問ではなく確認。だけど、フーケは首を振る。 「残念。あいつは、失態続きで干されててね。それで、あんたを誘拐する命令を受けた奴らから手柄を奪おうとしたんだけど、上手くいかなくて、今はレコン・キスタにも追われる立場になっちまったわけさ」 その言葉に、ワルドはうつむき何かを言おうとして思いとどまり、そんな彼にアンリエッタは口の端を歪める。 「トリステインを、いいえルイズを裏切り、レコン・キスタを裏切り、今は全てを失ったというわけですか。裏切り者の末路にはふさわしいですね」 それは、アンリエッタには相応しくない醜い嘲笑であったのだけれど、ワルドに対してなら、今の彼女にはそれも許されるだろう。 「それで、彼はどうなるのですか?」 「しばらくすりゃあ、あんたを迎えにトリステイン貴族共がくるだろ? そいつらに引き渡すさ」 どうせ死刑だろうしねと口の中で呟く。 フーケにとって、ワルドの存在は邪魔なものでしかない。かといって、自分の手を汚す気もない。 ほうっておけば、アプトムが始末してくれると思っていたが、何を考えているのか、そうしてくれる様子はない。 なら、トリステインに引き渡すのが一番いいだろうと彼女は思う。 トリステインという国にとって、ワルドは許されざる裏切り者であろうし、この国にはワルドの他にもレコン・キスタと通じている者がいる。 そのことが漏れることを恐れる者たちは、ワルドの口を塞ぎたいだろうし、なによりも愛する者を奪われたアンリエッタが彼を許すはずがない。 ワルドは、すでに自分がどうしようもない立場にあることを理解していた。 フーケにいいように行動を誘導されて、今ではレコン・キスタに居場所をなくしてしまった彼であるが、今にして思えば、あのままレコン・キスタに身を置いていても自分の目的が果たされたかどうかは怪しい。 クロムウェルという男には、本気がない。 全てにおいて、大げさに喜んで見せたり嘆いて見せたりの芝居がかった言動をするだけで、本心がどこにあるのか誰にも読ませない。 これまでは、それに疑問を覚えなかったワルドであるが、本当は虚無の系統の使い手ではないという一つの嘘がクロムウェルへの、ひいてはレコン・キスタという組織への不信感へと繋がってしまった。つまり、聖地奪還という言葉も偽りだったのではないかと今になって疑いを持ってしまったのだ。 それに、聖地を奪還するために戦わなくてはならない相手は先住魔法の使い手であるエルフだ。先住のアイテムに頼る者を首魁とするレコン・キスタが勝てる道理がどこにある? だが、それなら自分はどうすればいいのか? ワルドには、何もない。聖地に行く。その目的のために全てを投げ出してレコン・キスタについたのだ。 別に、そのことに後悔があるわけではないが、何も持たず目的を叶える手段すら失った今の彼には、行動の指針がない。 聖地を目指す。その目的に変わりはないがそのために何をすればいいのか。 それ以前に、このままここにいては最後に残った命すら失うことになるのだろうが、あの亜人――ガンタールヴであってガンダールヴでない男が逃がしてくれるはずもない。 そんな彼の心配が無用のものになるのは、そのすぐ後のことである。 アプトムにとって、もうここに用はない。フーケの言った虚無の魔法を使う者に会いに行くという目的ができたのだから、いつまでもここに留まる理由はない。 のだが、なかなか立ち去れないのは、何故か彼の着たローブを握り離さないアンリエッタがいるからである。 これはどういう状況なのかと思うのだが、当のアンリエッタの方もよく分かっていないらしい。 アンリエッタにとってアプトムという名の亜人であろう男は、ルイズの使い魔であるという以上の意味を持たない。 なのに、その手を離せない。 何故か、そばにいるとウェールズがいてくれているような錯覚を感じるのだ。この男とウェールズに共通点など見つからないというのに。 その感覚に関して、アンリエッタは自分の感情をこう分析する。 今ここにいるのは、自分以外にはルイズの使い魔のアプトム。レコン・キスタに属していたらしいのに何故か自分を助けてくれたらしいフーケ。そして、愛する男性の命を奪った憎むべき敵ワルド。 この中で、彼女の信用に値する相手はアプトムだけなのだから、そばにいて欲しいと思うのは当然ではないかと。 それが、正しい分析なのかどうかは別として、アプトムにとって、それは迷惑な感情である。だが、ルイズと、その使い魔になっている自分の事を考えると、ここでアンリエッタを邪険にするというのは賢い選択ではない。 どうしたものかと辺りを見回し、そして彼は気づく。 自身の能力によるワルドの利用価値に。 「俺のことが信用できるか?」 そんな言葉に困惑したのは、アンリエッタだけではなくフーケもである。 だがアプトムは、そんなことを気にせずにワルドに近づいていく。 アプトムには、融合捕食という他の生物を吸収し、その相手の遺伝子情報から優れた形質をコピーする能力がある。 その能力によって、彼は吸血鬼と呼ばれる亜人を取り込み、その能力を奪ったことがある。 その能力とは……。 前ページゼロと損種実験体
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6717.html
前ページ次ページゼロと損種実験体 その夜キュルケが親友の部屋を訪れたことに、さしたる理由はない。たんに暇だったとか、その程度の理由である。 そこで彼女は、ベッドに座った親友が両の目を閉じ、両手を合わせ何かをブツブツ言っている姿を発見する。 「何やってるのよ。タバサ?」 質問に、親友はビクッと肩を震わせてこちらに顔を向けてくる。どうやらキュルケが入ってきたことに気づいていなかったらしい。 「で? 何やってたの?」 バツの悪い顔の親友に、もう一度同じ質問をすると、どう誤魔化そうかと考えたらしい悩んだ顔の後、渋々と答えてくる。 「始祖ブリミルに、祈ってた。ルイズの使い魔が二度と帰ってきませんようにって」 「始祖ブリミルにって……」 あなた、始祖ブリミルへの信仰心なんてほとんどないじゃない。そんなことを思いつつも、この親友はこんなに追い詰められていたのかとも思う。 ただ、こうも思う。 「なんで、そんなに嫌うわけ?」 自分はともかく、親友がアプトムを嫌う理由が思い当たらない。 「嫌うって言うか……怖いって言うか……」 後ろの言葉は、消え入りそうに小さかったがキュルケは、それをはっきりと聞き取った。そして、考える。確かに、あの男は平民と考えるには驚異的な力を持っているが、貴族が恐れるほどの相手とも思えない。というか、相手がどれだけ強かったからといって、タバサが恐れるというのもなにか違う気がする。 感じる違和感がなんなのかと、つらつらと考えを言葉につむぐ。 「なんか、オバケを怖がる子供みたいって言うか……」 そう言った瞬間、ビクンッとタバサの体が弾けベッドから転がり落ちる。 「まさか、あなた……」 「違う! ルイズの使い魔がオバケだなんて思ってないっ! オバケなんかいない! いたら怖いから!」 うろたえ、そんなことを言う親友をキュルケは優しく抱きしめると、心の中で呟く。 ルイズ。あんたは早く帰ってきなさい。でも、使い魔の方はアルビオンに捨ててきなさい。 しかし、その想いは翌日には裏切られるのであった。 トリステインの王宮はブルドンネ街の突き当たりにあるので、そこに行く必要のあるルイズとアプトムは学院から馬に乗って三時間を費やした。 王女アンリエッタから受けた任務でアルビオンに行って来たルイズは、本当なら真っ直ぐに王宮に向かいたかったのだが、そうもいかない事情があった。 それは何かと問われたら、帰ってくるのに使った手段である。浮遊大陸アルビオンから歩いて帰ってくるわけにもいかない。 カブトムシに似た亜人の姿になったアプトムは、信じられない速度で空を飛びルイズをトリステインまで運んでくれたのだが、そのままの姿で王宮に行くわけにはいかなかった。 ルイズが最初に見たカメレオンに似た姿のように生々しいものではないので、見た目に嫌悪感を抱くことはないのだが、これまでに誰も見たことがないであろう異形であるし、見るものに警戒心を与えるに充分な巨体である。警備の魔法衛士隊が見れば、問答無用で撃ち墜とそうとするだろうし、逆にこっちが撃ち墜としてしまうのもまずい。 では、街の近くで降りて人間の姿に戻ってもらい、そこから歩いていけばいいのではないかとも思ったのだが、その場合、着替えを持っていないアプトムには裸でついて来てもらわなくてはならない。急いでいるとはいえ、全裸の男を連れて街を歩きたくはない。というか、それはそれで王宮に通してもらえないだろう。 そんなわけで、最初二人は学院に向かった。もちろん、直接飛んでいったりはしない。まず近くの森に降り立ち、そこからルイズが一人で学院に走って寮に行き、自分も土で汚れた服を着替えてから、アプトムの着替えを持ってきて、もう一度学院に戻り馬を借りた。 この時、アプトムがアルビオンに向かった時に乗っていった馬はどうしたのかと尋ねられたりしたが、急いでいるから後でと誤魔化した。 キュルケたちなりギーシュなりが乗って帰ってきてくれないかなと思ったりするルイズだったが、キュルケはタバサの使い魔の風竜に乗って帰ってきているし、ギーシュは生きて帰ってこれるかも疑問な状況だったりする。 そんなこんなで王宮にたどり着いたルイズとアプトムであるが、そこの門を潜るのがまた一苦労であった。 なにしろ、今の王宮には、隣国アルビオンを制圧した『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻してくるという噂が流れており、そのせいで衛士隊の空気は緊張に張り詰めたものになっていたのだ。 実家のヴァリエール公爵家の名を出して取次ぎを願ったルイズであったが、用件を言えなければ取り次げないと言われてしまう。 それは、当然のことなのだが、彼女が受けたのは密命である。言うわけにはいかず、ルイズも、衛士も困ってしまった。 これは、気軽に顔を合わせることのできない者に密命を与えた王女と、密命を受けたのに真正面から門を潜って会おうとするルイズの、どちらに呆れるべきなのだろうか。とアプトムが腕を組んで空を見上げていると宮殿の入り口から紫のマントとローブを羽織った少女が出てきた。アンリエッタである。 ルイズの名を呼び駆け寄った王女は、その美しい顔に笑みを浮かべ抱きついた。 戦時下にあるアルビオンに、ルイズのような世間知らずの小娘を送り出して無事に帰ってくる保証はない。ルイズに負けず劣らずに世間知らずで想像力に欠けたアンリエッタは、アルビオンにやったルイズが生きて帰ってこないかもしれないなどとは、欠片ほども考えていなかったが、もしかしたら大怪我をして帰ってくるかもしれないと心配し胸を痛めていた。 だから、特に怪我をした様子のないルイズの姿に、大いに喜んだし、その喜びを表現するために、着ている服はともかく髪やらなにやらが土まみれの親友に抱きつくことを厭いはしなかった。 そんな王女に、ルイズの目から涙がこぼれる。アルビオンから帰ってきて、まだシエスタにもキュルケにも顔を合わせていない彼女は、ここにきて初めてトリステインに帰ってきた実感を得て緊張の糸が途切れてしまったのだ。 そうしてウェールズから回収した手紙の入った胸ポケットを見せてくるルイズに、アンリエッタは彼女の手を硬く握り感謝の言葉を口にし、しかし、ここにルイズとアプトムしかいないことに落胆する。 「……ウェールズさまは、やはり父王に殉じたのですね」 黙って頷いてくることで伝わってくるルイズの答えは、予想の範囲内のことで。しかし、アンリエッタの心は傷つき、ウェールズは自分を愛していなかったのではないかと疑念を抱く。 だって、そうではないか。手紙の上でとはいえ、愛する自分が生きて亡命してくれと頼んだのだ。ウェールズが全てを捨てて来てくれるのなら、自分はいかなる手段を持ってしても彼を守る覚悟があった。なんなら、王女という身分を捨てて二人でどこか遠くに逃げてもいい。なのに、彼はその想いに応えてはくれなかった。 その想いが、自らの国に対する裏切りであるという自覚はあった。それでも捨てられない恋であるとアンリエッタは考えていたのだ。 だけど、それはただの独り相撲。彼女が想う程には彼は自分を愛してくれてはいなかった。ただ、それだけの話。 だから今はルイズが無事に帰ってきた事だけでも喜ぼうと、おともだちに眼を向けて、そこにいるはずの者の姿がないことに気づく。それは、もちろんギーシュなどではなく……、 「……して、ワルド子爵は? 姿が見えませんが……。別行動をとっているのかしら? それとも……まさか! 敵の手にかかって?! そんな、あの子爵に限って、そんなはず……」 浮かび上がってくるのは、信じられない想像と恐怖。 自分が、どれだけ危険な任務にルイズを赴かせたのかの自覚のないアンリエッタは、この国はもちろん、強国であるアルビオンを捜しても匹敵する者がほとんどいないと言われるワルドが帰ってこれないかもしれないなどとは、考えもしなかった。 だから、恐怖した。もしかしたら、ルイズも帰ってこれなかった可能性に思い当たって。そして、自分の無思慮な命令が大事な『おともだち』の大切な人を奪ってしまったのだと考えて。 だけど、世界は彼女が思う以上に残酷にできていて。王女は、ルイズの使い魔の男からワルドが裏切り者であった事実を聞かされる。 さすがに、他の者には聞かせられない話だったので、アンリエッタはルイズとアプトムを自室に招き、そこで唯一つを除いて全てを聞かされる。 つまりは、アプトムの獣化を含む能力に関すること以外の全てである。 話を聞いたアンリエッタは、その瞳から涙を溢れさせ、いやいやをするように何度も首を振る。 自分が送った者がレコン・キスタの回し者で、ウェールズの命を奪い、危うくルイズまで殺されそうになったなどという事実は、世界の醜いものを見せられることなく生きてきた善良な少女には重すぎる十字架であったのだ。 そんな彼女をルイズは慰め、親友からの許しを得たと理解した彼女は、ルイズの優しさに感謝し、それからウェールズを想う。 もしかしたらワルドなどを送らなければ、ウェールズは途中で心変わりして亡命してきてくれたのかもしれない。そんなありえないことすら考えてしまう。 もちろん、そんなものがただの幻想だということは理解している。男性というものは、愛する女より名誉だの何だのを優先する生き物だ。それを、他ならぬウェールズとワルド子爵が教えてくれた。だけど、そのくらいの夢を見ることは許されるはずだ。 そんな彼女にルイズは何も言えず、特に関心のないアプトムは何も言わない。 そうして話が終わり、退出しようとしたルイズは旅立ちの前に託された水のルビーを返そうとして、しかしアンリエッタは受け取らなかった。 それは罪の意識ゆえである。ルイズに危険な任務を与えたばかりか、ワルドのような裏切り者を同行させることで、更なる余計な危険まで背負わせてしまったのである。その程度で、労に報いたとは言えないが、そのくらいの物を与えておかなくては、気がすまなかったのだ。 そうして、ルイズとアプトムが退出した後、アンリエッタは一人になった部屋で両手を顔に当てて泣いた。 愛するものが命を落とした悲しみに、それが自分の責であるという罪の意識に、ルイズに悲しい思いをさせてしまった自分の愚かしさに。 王軍と反乱軍の戦争により廃墟と化したニューカッスル城を歩く二つの人影があった。 一人は、トリステインの魔法衛士隊の制服を来たヒゲダンディ。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。 一人は、フードを被り顔の上半分を隠した、女の細腕に不似合いな長剣を持った者。『土くれ』の異名を持つメイジの盗賊フーケ。 昨夜、待ち合わせていた酒場で合流した二人は探し物があって、この戦場跡へとやってきていた。 周りでは、レコン・キスタの兵士が、その辺りに転がる屍から金目の物を剥ぎ取っていて、それを見て何故だか不快な気分が湧き上がってきたフーケは、気をまぎらすために隣を歩くワルドに話しかける。 「しかしまあ、あいつと敵対して、よく生きて帰れたわね」 呆れたように言うフーケの言葉は紛れもない本心からの物で、ワルドは、それに苦笑を漏らす。あいつとは、元婚約者であるルイズの使い魔の事で、実際に面と向かって敵対していれば自分は生きていなかっただろうと彼は理解している。 フーケの忠告のおかげで死なずに済んでいるのだという自覚はあるが、どうせならもっと詳細な説明がほしかったところである。 もっとも、それは筋違いの不満だ。なにしろ、ワルドの偏在を撃退した時に使った、手から撃ち出す光線や切り飛ばされた腕の再生の能力の事をフーケは知らなかったのである。もしフーケの知る『あいつ』の能力の説明を受けていて、それで対応できるなどと思い込んでしまえば、かえって酷いことになっただろう。 「真正面からの勝負で勝てる相手ではなかった。だが、それだけだ。ウェールズの命も奪えた。脱出の機会も、もうなくなっていた。いかに強くてもただの一人の力でレコン・キスタ五万の兵から主を守りながら戦って勝てる道理もないし、今頃は……」 「死んでると思うかい? それは楽観が過ぎると思うけどね」 考えたくない事を言われて口を噤む。 彼とて、『あいつ』が死んだと信じきれてはいない。なにしろ、あんなバケモノと交戦した者がいれば噂にならないはずがないのに、それらしい報告を受けていないのだから。 とはいえ、生きているとは考えたくない。自分を凌駕する戦闘能力を持った敵が、五万の軍勢を相手に生き残る能力まで持っていては、彼とて戦慄を覚えずにはいられない。 そんな事を話しながら歩いていた二人は、瓦礫が山になっているところに辿りつく。そこは、二日前まで礼拝堂であった場所であり、ウェールズの遺体が転がっているはずの場所である。 ワルドの元婚約者と、その使い魔が死んでいたとすれば、その屍はこの瓦礫の下にあるのだろうと呪文を詠唱し杖を振ることで発生した小さな竜巻が瓦礫を吹き飛ばす。 だが……、 「あらら。誰の死体もないじゃないか」 フーケの呆れ声に、ワルドは顔色を変えて見回すが、確かにそこに転がっているはずの遺体がどこにもない。 元婚約者も、その使い魔も、自分がその手で害したはずのウェールズの屍すら。 「どうやってか、うまく逃げ出したって事だろうね。ほらっ、あんなところに、大きな穴が開いてる」 そう言ってフーケが指差した先には、直径にして一メイルほどの大きさの穴がある。 「この穴を掘って、逃げ出したってところじゃないの?」 にしても、なんでもありだね、あいつは。と思いながらの、「それでウェールズさまの死体までないってのは、どういうことだろうね。まさか仕損じたんじゃないか?」と言うフーケの質問に、ワルドはそんな筈はないと答える。 自分の一撃は確実にウェールズの胸を貫いていたのだ。あれで生きていられる人間がいるわけがない。 いや、なんかもう、あの使い魔なら心臓に穴が開いても生きていそうな気がするが、あれは例外にしよう。バケモノだし。 「て事は、ラ・ヴァリエールの娘と『あいつ』が持ってったってわけだ」 まあ、どうでもいいけどね。と本当にどうでもよさそうに肩をすくめる。 アルビオン王家に恨みを持つフーケではあるが、自分の手で殺してやりたかったとか、遺体を辱めてやりたいという考えはない。 そんなわけで他にすることもないので、なにやら敗北感に満ちた顔をしているワルドをニヤニヤと眺めていると、遠くから声がかけられた。 「子爵! ワルド君! 件の手紙は見つかったかね? アンリエッタが、ウェールズにしたためたという、その、なんだ、ラヴレターは……。ゲルマニアとトリステインの婚姻を阻む救世主は見つかったかね?」 声と共に現れたのは丸い帽子の裾から金髪を覗かせ、緑色のローブとマントを纏った三十半ばの男。レコン・キスタ総司令官オリヴァー・クロムウェル。 現れたクロムウェルに対して、ワルドは首を振り頭を垂れる。 自分は任務に失敗したのだ。相手が悪かったといえばそれまでだが、そんな言い訳が許されるものではない事は理解している。 だが、クロムウェルは怒らなかった。同盟阻止などより、確実にウェールズをしとめるほうが重要なのだからと言って。 しかし、しとめたのはいいが遺体を持っていかれたのは残念だ。とクロムウェルは二人を促して礼拝堂を出る。 そうして歩いていった先にあるのは一つの屍。かつてはジェームズ一世と呼ばれていたもの言わぬ肉の塊。 「我々は聖地をあの忌まわしきエルフどもから取り返す! それが始祖ブリミルより余に与えられた使命なのだ! その偉大なる使命のために、始祖ブリミルは余に力を授けたのだ」 そう言って抜いた杖を振り、呪文の詠唱とともにジェームズ一世に振り下ろした時、彼の王の肉体の損傷は修復され、その眼を開いた。 立ち上がり、クロムウェルに対して膝を折ったジェームス一世を見下ろし、これこそが、始祖ブリミルが使い今は失われた虚無の系統の魔法なのだと、彼は言った。 その夜。酒場にて、ワインを口に含みフーケは思う。昼間見たあれは本当に虚無系統の魔法なのだろうかと。 たしかに、死者を還すなどという魔法が他にあるとは思えない。だが、違和感を感じる。何故なら、彼女は他に虚無系統としか思えない魔法を知っているから。 そして、虚無の魔法を使うというのなら、始祖の使い魔を連れているべきなのではないかとも思うから。 そんな彼女の隣の椅子に、薬箱くらいの大きさの荷物を持ち、フードで顔を隠した一人の男が腰を下ろした。 また、馬鹿な男が寄ってきたなと杖を抜く彼女に、男は『土くれ』のフーケだなと問いかけてきた。 なんだか聞き覚えがある声だなと、そちらを見ると男はフードを外し、その顔を見たフーケは口に入れていたワインを盛大に噴いた。 「あああ、あんた、なんでここにいるんだよ。ヴァリエールの娘と一緒に逃げてったんじゃなかったのかい?」 周りの視線など知らぬと言わんばかりの大声で叫ぶ彼女を気にすることなく、男はフードを被りなおして、「ああ、無事にトリステインに帰ったはずだぞ」などと意味不明なことを言ってくる。 もう、なんでもいいや。こいつの事は深く考えても疲れるだけだ。 いろいろと馬鹿馬鹿しくなったフーケは、何も言わず無造作に足元に転がしてあった長剣を男に渡す。 その際、剣が少しだけ鞘からこぼれ、錆びの浮いた刀身が見えたと同時に声が響いた。 「おっ、相棒じゃねえか? そうか俺を迎えに来てくれたんだな。いいとこあるじゃねえか……って、どういうことだオイっ!」 それは、インテリジェンスソードのデルフリンガー。ラ・ロシェールで忘れられ置いていかれていたそれをフーケが回収していたのだ。こんなでも新金貨百枚の価値はあるわけだし。 何に驚いたのか大声を上げるデルフリンガーにフーケは耳を押さえながら迷惑そうな顔を向けるが、本人はまったく気にするそぶりもなく言葉を続ける。 「どういうことだよ相棒。使い手じゃなくなってるじゃねーか」 何のことやら? とフーケは思うが、男のほうは思い当たることがあったらしく、左手を出してみせる。そこには……、 「ルーンがねえ! どういうこった?」 いちいち叫ぶ魔剣がうっとおしくなったのか、男は剣を鞘に納め言葉を封じるとルーンがある方はルイズと一緒にいるとだけ答えた。 はっきり言って、いまいち理解できなかったフーケだが、偏在のようなものだと言われて、こいつの事は深く考えるだけ損だと悟ったばかりだろうと自分に言い聞かせて無理やり納得することにした。 それで、自分に何の用だい? 別に剣を返してもらいにきたわけじゃないんだろ? と問いかけるフーケに男はもちろんだと答え。自分をレコン・キスタに入れてくれと頼んできた。 男。アプトムには目的がある。その目的のためにルイズの傍にいたわけだが、最近それだけではいけないのではないかと考えた。 だから、彼は半ば偶然に作ることになった分体に情報を集めさせる事を考え、その分体はクロムウェルという虚無系統の魔法を使う者の噂を聞き、それを調べるために内部に入り込むことを考えたのだった。 前ページ次ページゼロと損種実験体
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/976.html
自分が押しに弱い性格だとは思っていないが、 一方通行は流れに押される形でオルソラの目指していた女子寮へ招待されていた。 出されたコーヒーを飲みながらオルソラ保護の経緯について説明する。 相手をしたのは先程オルソラを迎えに来たシェリーという女性だ。 ゴスロリチックな服装に全方向へ広がるワイルドな長髪と、 なかなかにエキセントリックな見た目だが、これでも修道女らしい。 「ミルクはいかがでございますか?」 「いらねェ」 オルソラがにこやかに勧めてくれたが、一方通行は一言で辞退した。 「で、テメェは本当に私達の敵じゃないのね?」 「むしろこっちがそっちの身の潔白を証明してほしいンだがな」 「お互い疑ってちゃキリがねえな。オルソラは信用してるみたいだけれど」 ぽりぽりと頭を掻いて、シェリーは足を組み直した。 「学園都市の人間だそうだけど、こんな所まで何しに来たの?」 「そこの修道女を送りにだろォが」 「分かった分かった。質問を変えるわよ。英国に何しに来やがった?」 コロコロと男性口調と女性口調が入れ替わる。どうも統一感がない。 シェリーという女性も癖のある人物だった。 ただ、一方通行も自分が美しい言葉遣いをしているとは思っていないので、 口調に関しては特に文句はなかった。 「何しにねェ……俺がソレに答えてどォなる?」 「逆に答えないとどうなるか教えてやろうか?」 「ミルクはいかがでございますか?」 「おもしれェ。ミルクはいらねェ。手取り足取り教えてもらおォじゃねェか」 「エリスの手足はちょっとデケエぞ? 潰されても泣くなよ」 「ではカップを動かさないで下さいでございますよー」 「ハッ。サイズがでけェくれェでこの俺を潰せると……おい! ミルクいらねェっつってンだろ!」 勝手に注がれそうになったので、会話が一時中断した。 「……世界各国に監禁されてるガキ共がいるンだよ。当然英国にもな。 そいつらを解放してンだ」 手でコーヒーカップに蓋をしながら、一方通行は白状した。 迫り来るミルクとの格闘に疲れて、情報の秘匿にまで頭が回らなくなってしまったのである。 この状態でも油断は出来ない。 手にミルクが降り注がれることもあり得るのだから。 「世界各国ですって? そんな大規模なことが出来る組織はそうそうねえぞ」 「ローマ正教っつったかな。少しずつだが情報は集めてる。奴らの目的も分かって来た」 「ローマ正教!」 シェリーは思わずオルソラを振り返る。 彼女は今でこそイギリス清教のシスターだが、かつてはローマ正教に属していたのだ。 「オルソラ、何か知ってる?」 「はい、お砂糖ならこちらに用意しているのでございますよ」 (入れさせねェ) 「砂糖はどうでも良いんだよ。ローマ正教が集団で人攫いやってるらしいけど、聞いたことはある?」 「人攫い、でございますか……? それは、多少後ろ暗いこともやっているとは存じておりますが……」 集団で世界中となると、オルソラも流石に心当たりがないらしい。 という情報を得るのに十五分掛かった。 「何か嘘臭い話だな」 「わざわざ無関係の奴に信じてもらいてェとは思ってねェよ。学園都市はそォでなくても忙しいンだ」 「忙しい?」 「とある学生がな、 禁書目録が必要悪の教会の裏切り者の集団に連れ去られ、 助けに向かった仲間二人も捕えられて、 それを助けにいった仲間の集団がまとめて捕虜にされて、 そいつらに恩のある修道女が犯人たちを説得に行って迷子になって行方不明、 探しに行ったイギリス清教の部隊が罠にハマって捕獲され、 一方その頃とある学校ではある教師の家に生徒が遊びに行ったら先生も同居人の女子高生も見当たらず、 それを探しに行った女子生徒自身も帰って来ないし、 それを心配して探しに行った男子生徒も帰って来ないし、 立ち上がって捜索に当たった女子生徒も戻らないし、 出発前に女子生徒ら相談を受けた女教師も行方不明になって、 探しに行った同居人が全員消え、 その内の二人の調査に当たった一万人がいきなり連絡不能になり、 それを知った超電磁砲が探しに行って何者かに拉致され、 追いかけて行った風紀委員の後輩とその友達が誘拐され、 超電磁砲のファンの少年とその義妹がやはり彼女を探しに行って帰って来ず、 所変わって暗部では新生アイテムの四人が軒並み行方不明、 スクールの残党が音信不通、 忍者が二人地味に消えて、 ついでに最近科学の天使の目撃情報がめっきり減ってるらしいし、 海を越えてイギリスでは女王と王女三人と騎士団長が正体不明の誰かに拘束され、 魔術の小組織の四人が消息を絶ち、 イタリアでは『神の右席』とかいうのの三人が縛りあげられて ローマ教皇が何者かに誘拐されて ロシアでも修道女が一人忽然と姿を消し、 エリザリーナ独立国同盟では代表者が出かけたっきりいなくなり、 あと飼い猫を何日か前から見かけなった とかで今も駆け回ってンだよ」 シェリーとオルソラは、ポカーンとしていた。 先に立ち直ったのはオルソラだ。 普段から割とぽかんとしているからだろう。 「それは何だか、上条様みたいな学生様でございますねえ」 彼女のその小さな一言で。 かちり、と、場の人間の関係が噛み合った。 「……言われてみればそうね」 「何だって、上条? オマエ知ってンのか」 「! あなた様はご存知なのでございますか?」 「……」 「……」 上条の知り合いだと名乗り合ったことで、一方通行とシェリーは取り敢えず相手を信用する気になった。 上条のお陰、ということになってしまうのだろうか。 オルソラ以外は納得いかない気分だったものの、緊張の解けた雰囲気で対話が再開された。 コーヒーはミルクと砂糖の六度の襲撃から見事守られたが、冷めた。 「つまりあの坊や、オルソラやアニェーゼ達まで助けようとしてるってことなのね」 シェリーが確認するように呟き、口を閉じる。 会話が途切れた隙に、オルソラが頬笑みながら一方通行に声を掛けた。 「一方通行さん、レモンはいかがでございますか?」 「あの野郎には関わりたくはねェンだがな。レモンはいらねェ。(レモン?) 俺に因縁のあるガキ共までアイツの守る対象に加えられそォになってたから、手を引かせたンだよ」 「それを言うなら、イギリス清教の奴らだって……」 シェリーはしばし黙りこみ、口元に手を当てて何か考えていた。 そして、何事が決心したように頷く。 オルソラの方を見て、唇を開いた。 「上条当麻に連絡は取れる?」 「あ、私番号を教えてもらったのでございますよ」 「これ以上借りを作りたくねえからな。 イギリス清教に関係する人間はイギリス清教が片を付ける。 だから手を出すなって伝えて頂戴」 「といっても、今動けるのはシェリーさんと私くらいなのでございますが……」 「テメェはここから一歩も動くな」 最大主教は健康そのものだが、どうにも当てにならない。 よってここでまともに活動できるのはシェリーのみである。 だが臆さない。彼女は常に一人ではない。 頼もしいパートナーがいるのだ。 そのあたりの事情をよく知らない一方通行は、彼女たちの様子を黙って眺めていた。 コーヒーを啜る。 「すっぺェ!!!」 いつの間にか、彼のカップに薄切りのレモンが浮いていた。 二分ほどして。 通話を終えたオルソラが、にこにこ微笑みながら二人のもとへ帰って来た。 「お留守番の女性の方に事情を説明して来たのでございますよ」 「そりゃ留守番電話サービスだ。ちゃンと録音できてりゃ伝わるだろ」 かなり不安だが、そこまで一方通行が面倒を見る義理はない。 「じゃァ……」 やっと妹達の解放作業に戻ろうと席を立つ一方通行に、シェリーが声を掛けて来た。 「行くの?」 「ざっと四千件ほど野暮用が残ってンだよ。のンびりコーヒー飲ンでる場合じゃねェ」 向きを変え、歩き出す。 挨拶もせず出口へ向かう彼に、シェリーは最後に一言、伝言を頼んだ。 「今度あいつに会ったらさ、言っておいて。どうもありがとう、死ねって」 「……おォ」 どうも、統一感のない女である。 そこで、 「あ!!」 突然叫び声を上げたのはオルソラだ。 珍しく驚いた顔をして、周囲をきょろきょろ見回している。 「どうした?」 シェリーが警戒心を顕にした表情で、おっとりシスターさんの驚愕の顔を見つめて尋ねた。 オルソラは応えて言った。 「私、いつの間に寮へ帰って来たのでございましょう?」 「!?」 「!?」 !? ■■■■救助リスト(抜粋)■■■■ ===イギリス清教=== 必要悪の教会 禁書目録 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 ステイル=マグヌス 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 ロンドン女子寮 神裂火織 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 オルソラ=アクィナス 【解決済】 天草式十字凄教 建宮斎字 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 浦上 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 五和 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 牛深 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 香焼 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 諫早 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 野母崎 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 対馬 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 他44名 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 アニェーゼ部隊 アニェーゼ=サンクティス 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 シスタールチア 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 シスターアンジェレネ 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】 他約200名 【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7829.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 七五七 体力点一を失う。 布製の縁なし帽は持っているか? なければこの術は効かず、君はあきらめてジョンストンの話に集中することに決める。三三九へ。 縁なし帽を持っているなら、頭にかぶって術を使え。 君は、カルトゥームと呼ばれた黒髭の男に注意を向ける。 男はマザリーニをはじめとした周囲の人々の態度を、奇妙なものだととらえていることがわかる。 たいして珍しくもないゾンビーを見て恐れおののくさまは、滑稽でさえあると考えている――やはりド・ポワチエ将軍の死体は黒魔術で動いており、 ≪虚無≫の力がどうこうというジョンストンの言葉は嘘なのだ。 また、男はジョンストンのまわりくどいやり方にうんざりしている。 彼としては、できるなら、≪門≫の向こうに控えた軍団をこの場になだれ込ませて一息に決着をつけてしまいたいのだが、 そうもいかぬ事情がある。 昨夜の戦いで失った兵があまりに多かった――カステルモールとその仲間たちは獅子奮迅の働きを見せたのだろう――ため、 強引な攻撃はしばらく控えねばならぬのだ。 しかし、七日も経てば充分な数の増援がやって来る手筈となっている。 それまでにトリステイン宮廷が要求を受け入れていればよし、さもなくば…… そこまで思考を読み取ったところで、術の効果は消える。一八八へ。 一八八 話を終えたジョンストンは最後に一言、 「これにて失礼いたしますぞ枢機卿猊下、それにド・ポワチエ将軍も!」と言い残すと踵を返し、 逃げるような足取りで≪門≫へと飛び込む。 ジョンストンの姿が鏡のように滑らかな≪門≫の中へと消えると、周囲の人々のあいだから驚愕のざわめきが巻き起こる。 残された五人もその後を追って姿を消し、全員の姿を飲み込んだ≪門≫もまた、一瞬の閃光とともに跡形もなく消えうせる。 後に残されたのは君とマザリーニ枢機卿、宮殿勤めの者たち、そして立ちつくす一体のゾンビーだ。 力なくうなだれているマザリーニに声をかけると、彼は顔を上げ、 「ド・ポワチエ将軍が……どうすればいい? このようなおぞましい所業が、始祖の使った≪虚無≫の力によるものだとは信じられん。 君は何か知っているのか?」と混乱した様子を見せる。 君は説明する。 これはゾンビーという≪不死≫であり、ありふれた妖術の産物にすぎない――ジョンストンの言葉はでたらめだ、と。 「君は連中のやり口を知っているようだな。カーカバード国の輩のことを」 いくらか落ち着きを取り戻したマザリーニは、もの問いたげな目で君を見つめる。 「しかし、詳しい話は後だ。今は、この魔法を解かねばならん。どうすれば、彼の魂は救われるのだ?」 君は、特別なやり方は必要としない、ただゾンビーの肉体を破壊すればよいだけだ、と答える。 剣で斬るなり魔法で焼くなりすれば、屍を操る術の効果は失われるのだ。 それを聞いたマザリーニは杖を拾い上げ、ド・ポワチエ将軍のゾンビーに近づくが、ためらいの色を隠せずにいる。 痛みを感じぬ死体にすぎぬとはいえ、見知った相手の体を傷つけるのには抵抗があるのだろう。 それに、枢機卿という高位の聖職に就いている彼は、こういった荒っぽい行いには不慣れに違いない。 替わろうかと申し出ると、マザリーニはかぶりを振る。 「いや、これは誰かに任せるわけにはいかん。将軍がこのような姿に変わり果てた責任は、この私にある。私が彼を、アルビオンへと 送り出したのだから。それに、始祖に魂の救済を祈るのは、聖職者たる者の務めだ」 そう言うと杖を構え、祈りの言葉をつぶやく。 「始祖よ。願わくばこの哀れな者の魂に、安らぎを与えたまえ。この者の魂が天上への道に迷わぬよう、導きたまえ…… 」 次に呪文の詠唱がはじまると、杖は青い光に包まれる。 ド・ポワチエ将軍はあいかわらずうつろな表情で、ぼうっと立ち尽くしたままだ。 何の命令も与えられておらぬゾンビーができる事といえば、その場で朽ち果てることだけなのだから。 「……許してくれ、将軍」 マザリーニは悲痛な面持ちで、杖を突き出す。三七八へ。 三七八 ゾンビーの始末をつけたマザリーニと君は、会議に使っていた部屋へと戻るが、その途中で枢機卿が口を開く。 「ジョンストンの口から出た条件は、過酷なものだった」 そう語る声は、苦悩と嫌悪に充ちている。 「一つ、トリステイン王国は二度と神聖アルビオン共和国を攻撃せぬと誓約をなすこと。一つ、その保証として、太后陛下と姫殿下の身柄を 差し出すこと。一つ、アルビオン遠征軍に対してすみやかなる戦闘の停止を命じ、また、遠征軍はすべての杖と武器、竜や馬などの騎獣、 そして艦船をアルビオン軍に引き渡すこと……」 マザリーニの顔が、怒りにゆがむ。 「なんという厚顔無恥な要求を!」と吐き捨てるように言う。 「条件を呑めば、トリステインはたちまちアルビオンの属領となってしまうだろう。すべての王家を打ち滅ぼしハルケギニアを一つにすることこそが、 彼ら≪レコン・キスタ≫の目的なのだから。太后陛下と姫殿下を人質として差し出すなど、言語道断だ」と言う。 君は、それでは徹底抗戦するつもりなのか、と尋ねる。 マザリーニはうなずく。 「仮に私がクロムウェルの要求を受け入れたところで、国内の諸侯は誰ひとり従うまい。彼らは王国を売った逆賊『鳥の骨』を殺し、 太后陛下たちの身柄を奪い返そうとすることだろう。トリステインに反抗の意図ありと知ったクロムウェルは、≪門≫を開き、 そこからアルビオンとカーカバードの大軍勢が現れる。敵はトリスタニアを、いや、王国全土を火の海に変える。それならば、 闘うほうがまだましだ……望みが皆無というわけではない」 望みといっても、敵に≪門≫がある限り絶対に勝ち目はない、と君は言う――風大蛇が言っていたとおり、城壁も軍勢もまったく無意味なものと なってしまうのだから。 「そう、≪門≫こそが我らにとっての最大の脅威だ。つまり、あの魔法兵器さえどうにかしてしまえば、まだ打つ手はあるということだ」 マザリーニの言葉に驚いた君は、黙り込む。 彼は、≪門≫がどのようにして作り出されているのかを知っているのだろうか? 四一三へ。 四一三 会議室に戻った君とマザリーニを迎える人々の面持ちは、前にもまして陰鬱なものだ。 エレオノールの口から事情を聞かされたのだろう、ルイズの表情は硬くこわばり、オスマンの眉間には深々とした皺が刻まれている。 エレオノールの険しい視線が突き刺さるなか、君は何気ない風をよそおって席につく。 ルイズが眉をひそめる。 「あんたねえ、あんまり勝手なことしないでよ。あとで姉さまに叱られるのは、わたしなんだから」 君はルイズに軽く詫び、収穫は乏しい、と言う。 クロムウェルが手を結んだ相手が、本当にカーカバードの者たちかどうかはわからぬが、≪タイタン≫からの来訪者であることは間違いない、 と伝える。 また、≪門≫は見たこともない物であり、ハルケギニアはもちろん、≪タイタン≫においても未知の魔法の産物に違いないと言う。 「≪タイタン≫って確か、あんたのもと居た世界よね。月が一つしかないっていう。敵の要求については聞いた?」 君がうなずき、ひどい話だと漏らすと、ルイズは力なくうつむく。 「いったい、トリステインはどうなっちゃうの?」と口ごもる。 「要求を受け入れれば姫殿下たちは連れ去られ、王国は滅びる。拒めば敵がやって来て、カステルモール卿がお話ししていたようなことが…… みんな……死んじゃうかもしれないなんて……」 なかばひとりごちるようにそう言うルイズの顔は、真っ青だ――部屋の片隅で暗い表情を浮かべるアンリエッタ王女と同じように。 「……シティオブサウスゴータの司令部が≪門≫を使った奇襲を受け、司令官のド・ポワチエ将軍は……戦死をとげた。 遠征軍は混乱に見舞われている。ガリア軍が同様の攻撃を受けたかは不明だが、どちらにせよリュティスを襲った惨事の報せが届けば、 士気は砕かれ、連合軍は崩壊するだろう。クロムウェルの操る魔法兵器の恐ろしさと、その威力を楯にした傲慢な要求については、 ここにいる皆が理解した事と思う」 議長役を務めるマザリーニが、その痩身から声をしぼり出す。 「クロムウェルの卑劣な恫喝に屈して、太后陛下と姫殿下を差し出し、さらにはトリステインそのものを明け渡すなど論外だ」 その言葉に、アンリエッタは身じろぎする。 「かと言って、兵をかき集めて抵抗しようにも、王国軍の大半はアルビオン大陸に居る。いや、十万の増援を得たところで、 ≪門≫の前には無力だ。リュティスの惨劇が繰り返されるだけとなろう」 今度はカステルモールがびくりと肩を震わせる。 「ラ・ヴァリエール嬢。王立魔法研究所の研究員として、≪門≫について何か思うところはないかね?」 マザリーニに水を向けられ、エレオノールは答える。 「これは、我々の常識をはるかに超えた出来事です」と。 「敵の兵器はおそらく、≪サモン・サーヴァント≫の魔法で現れる≪召喚の門≫をもとに作り出されたのでしょう。 しかし、≪サモン・サーヴァント≫のような≪コモン・マジック≫を改良したり、発展させて新しい魔法を作ったなどという話は、 聞いた事もありません。どの系統にも属さない≪コモン・マジック≫の仕組みが謎に包まれているのは確かですが、 始祖ブリミル降臨より六千年、誰もそれを解き明かそうとはしませんでした。使い魔をもたないメイジが ≪サモン・サーヴァント≫の呪文を唱えると≪召喚の門≫が現れるのは、朝になれば陽が昇るのと同じくらい当然のことでしたから」と答える。 君は内心で悪態をつく――王立魔法研究所とは、たいそうな名前のわりに役に立たぬ所なのだな、と。 「じゃが、≪コモン・マジック≫を研究したメイジが、ひとりもおらぬというわけではなかった」 そう言ったのはオスマン学院長だ。 「我が旧友、アルビオンの貴族リビングストン男爵は、≪サモン・サーヴァント≫を応用して世界中をつなぐ≪門≫を作り出す魔法を、 研究しておった。実際に≪門≫は彼の前に現れたが、すぐに消えてしまう不安定なものだったそうじゃ」 「おお、≪門≫について何かをご存じなのですか? さすがはオールド・オスマン。お呼び立てしたかいがあったというものです」 マザリーニの歓喜と賞賛の言葉をさえぎり、オスマンは言う。 「ぬか喜びさせるようですまんのですが、私の知っていることはそれだけですぞ、枢機卿。男爵は研究の詳しい内容を誰にも伝えぬまま、 ≪レコン・キスタ≫に殺されたそうじゃ」 オスマンは横目で君とルイズををちらりと見る。 「それが、クロムウェルの作り出した≪門≫と関係があるのかどうかさえ、わからぬままです。恥ずかしながらこの件に関しては、 私は何のお役に立てそうにもありませんわい」 そう言うと、オスマンは深く溜息をつく。五二二へ。 五二二 マザリーニは重々しく語る。 「これではっきりとした――我らには、敵と同じような≪門≫を作り出すのも、≪門≫の出現を阻むのも、不可能な事が。そのような魔法は、 トリステイン最高の賢人にも、王立魔法研究所にも、理解の埒外にあるのだ」 それを聞いたエレオノールは、 「しかし、枢機卿猊下。一介の地方貴族にできた事です。『アカデミー』が総力を傾ければ、≪門≫について何かを解明することも……」と、 口を挟む。 「もはや手遅れだ、ラ・ヴァリエール嬢。我らに残された時間は、あと七日しかない。それまでに手を打たねばならん」 マザリーニは意を決した口調で言う。 「ことここにいたって我らのとるべき行動は、守りを固め、座して敵を待つことではない。逆に奴らの懐に飛び込んで、 ≪門≫をこの世から消し去ることだ――永遠に!」 アルビオンから来たホーキンス将軍を除いた全員が、驚きのあまり言葉を失い、信じられぬといった表情を枢機卿に向ける。 最初に我を取り戻したのはオスマンだ。 「どうすれば≪門≫を消せるのかをご存じのようですな、枢機卿」 マザリーニはうなずく。 「ホーキンス将軍は、多くの重要な情報と、わずかな望みをもたらしてくれた。実質的にアルビオン陸軍を束ねていた将軍は、 クロムウェルの秘密兵器についても多くの事を知っているのだ。将軍、続きを話していただけますかな。≪門≫について知っていることを、 何もかも」 「承知いたしました」 ホーキンスが立ち上がる。 彼は背が高く、軍団を率いるにふさわしい威厳をもつ男だ。 「おおせの通りにいたしましょう。お集まりの諸卿の中には、アルビオン王家に対する裏切り者であるこのわたしを、 信用に値せぬ輩とみなしておられるお方もおいででしょう」 ホーキンスはパリーを、ついでルイズをちらりと見る。 「しかし、わたしがこれから話す事は始祖に誓って真実です。今は遺恨を忘れて、わたしの話に耳を傾けてくださるようお願いします」 「手についた王族の血も乾かぬうちに、新しい主人さえ裏切るとは。はたして、始祖への誓いも信用してよいものやら」 重臣のひとりが小声で皮肉を漏らす。 その目には疑いと軽蔑の色が浮かんでいる。 「慎みたまえ、今はそのような事を言っている場合ではない!」 咎めるマザリーニに向かって、ホーキンスが言う。 「いや、卿の言うとおりです。わたしは裏切りに裏切りを重ねた卑劣な男です。王家を見捨てた罰はいかようにも受けましょう。 しかし、今だけはわたしを信用していただきたい」と。 そして、穏やかだが決然とした目つきで、その場にいる全員の顔を見回す。 「今はクロムウェルを止めることが先決です。このままでは大陸の諸国はことごとく彼の手に落ち、 アルビオンは喰らい尽されてしまうことでしょう――カーカバードのけだものどもに。クロムウェルは同盟関係を保つために必要な措置などと言って、 カーカバード兵の蛮行を野放しにしているのです。こうしている間にも、奴らは奪い、焼き、犯し、殺していることでしょう……我が祖国、 アルビオンの民を!」 怒りと悲しみに声を荒げるホーキンスを前に、先ほどの重臣は気まずそうに顔をそむける。 ホーキンスは、ただでさえ内乱で疲弊しきったアルビオンの民が、さらなる暴虐にさらされるのを見るに耐えず、トリステインに降ったのだろう。 君はこの白髪白髭の武将を信用することに決める。五四五へ。 五四五 「結論から申せば、≪門≫は奇妙な装置によって作り出されています」 ホーキンスは、いかにも軍人らしい簡潔な言い回しで語る。 「装置は『ロンディニウム塔』の最上階に設置されていますが、≪門≫そのものは城壁の外側にあります」 『ロンディニウム塔』とはなんだろう? 君は隣に座るルイズに小声で尋ねる。 「アルビオンの王都ロンディニウムの郊外にある要塞よ。高貴な身分の囚人を幽閉する監獄として、悪名高い場所だわ」 彼女は眉をひそめる。 「そして、世界一堅固な砦としても知られておる」 君とルイズのひそひそ話に割り込んできたのは、オスマンだ。 「設計こそ古いが、城壁は高く分厚いうえに、定期的に強力な≪固定化≫をかけられておるため、≪錬金≫もゴーレムの拳も通用せん。 むろん、塔本体も同様の処置を受けておる。完成して以来八百年余、ひとりの脱獄も許しておらんとの噂がある――おそらく真実じゃろうて。 囚われの貴人を取り返そうと、数千の軍勢が攻め寄せた事もあったが、彼らは門を破ることさえかなわなんだ。まったく、人でも物でも、 何かを守り隠すには最高の場所じゃな」と言う。 君たちが話している間にも、ホーキンスの説明は続いている。 「……装置によって作られた≪門≫は、リュティスやこの宮殿に現れたものだけではありません。≪門≫はもう一つ存在し、 それは常に開かれています。醜く残虐な蛮族と亜人の軍勢は、そこから続々と吐き出されているのです。そう、その≪門≫は呪わしいことに、 アルビオンとカーカバードをつないでいるのです」 「時間が経てば経つほど、敵は強大になっていくということですか……『グラン・トロワ』を陥れたあの大軍でさえ、ほんの先触れにすぎぬと?」 カステルモールの言葉に、ホーキンスはうなずく。 「わたしが陣を抜け出してトリステイン軍に降ったのは四日前ですが、その時点でアルビオンにやって来たカーカバードの兵は……」 そこまで言ったところで苦しげな表情を浮かべ、口ごもる。 「将軍?」 重臣のひとりの気遣わしげな呼びかけに応えて、ホーキンスはうめくように言葉を続ける。 「……およそ五万」と。 テーブルを囲んだ人々の間からどよめきが漏れる。 君は首をかしげる。 無秩序なカーカバードでは、五万どころか五百の兵を集めることさえ、容易ではない。 ≪旧世界≫のもっと文明的な王国でも、数万もの軍勢をかき集めるのは不可能に近い難事だ。 クロムウェルの同盟者たちは、本当にカーカバードから来たのだろうか? 君の頭の中で数々の疑問が膨れ上がり、もはや黙って話を聞いてはいられなくなる。 何か一つだけでも疑問が氷解すれば、この気持ちも落ち着くだろうと考え、手を挙げる。 「連合軍との戦いやリュティス襲撃で損害を出したとはいえ、奴らは容易に補充を……何かね?」 思わぬ動きを見せた君を見て、ホーキンスはいぶかしげな表情をし、エレオノールはあきれたようにかぶりを振る。 「な、なにしてんの! 貴族の話の邪魔をするなんて、無礼にもほどがあるわよ!」 ルイズの非難にも構わず、君は将軍に向かって、質問があると言う。 ホーキンスは探るような目つきで君を見据えたのち、 「では、一つだけ。手短に頼むぞ」と答える。 何を訊く? カーカバード国の王の名前を尋ねるか(二四四へ)? 門を作る装置についてもっと知りたいか(四五六へ)? それとも、七大蛇について知っていることはないかと尋ねるか(五へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6775.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ ロイヤル・ソヴリン号の反乱。 その一報が伝えられたとき、ハヴィランド宮殿の中で驚かない者は居なかった―――少なくとも表面的には。 アルビオン王立空軍大将にして本国艦隊司令長官、そしてアルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダーもまた驚愕に身を震わせた。そして直ちに反乱を収めるために本国艦隊を出動させ、臨時旗艦イーグル号にて陣頭指揮を執ることとなった。 ハルケギニア全てを見渡しても最大級の戦艦ロイヤル・ソヴリン号といえど僅か一隻による反乱。その討伐に五十隻以上の本国艦隊を投入をウェールズ王子に決意させたのは、威圧によって砲火を交えることなく反乱を収束させる思惑があった。 ―――だが、その思惑は最悪の形で裏切られることとなる。 イーグル号のすぐ隣を先ほどまで航行していた軍艦が、爆発を繰り返しながら高度を落とし大地へと墜ちていく。 「殿下! モントローズ号が墜ちては戦線を維持しきれません!」 「後詰のサマセット号とケント号を右翼に回せ! 何とか支えきるぞ!」 次々に入る絶望的な報告に、ウェールズは矢継ぎ早に指示を下す。 爆音と閃光と衝撃―――砲火の中、襲い掛かってくる竜騎士たちに、イーグル号の散弾砲が迎え撃ち辛うじて接近を防ぐ。その間に、後方に控えていた二隻の軍艦がイーグル号の右へ移動し、ようやく一息をつく間を与えられたウェールズは、額の汗を拭いながら敵艦隊の最深部に鎮座する、全ての元凶たるロイヤル・ソヴリン号を睨みつける。 「パリー……。あのクロムウェルという男の手腕は見事なものだな」 「ふむ、ロイヤル・ソヴリン号のみならず、四十隻もの軍艦に反乱を決意させておりますからのぉ」 パリーと呼ばれた老メイジも、ウェールズと同じようにロイヤル・ソヴリン号を睨みつけていた。 「しかし、策士としては天晴れなれど、軍人としては失格としか言いようがありませんな!」 クックックと不敵な笑い声をあげるパリーに、ウェールズも釣られて笑い出す。 「その通りだ。これだけの兵力差、しかもこちらの腹を突いたにも関わらず、我らを仕留めることが出来ないようではね」 ほんの僅かな間ではあったが、イーグル号の後甲板に戦場には不似合いな明るい笑い声が響いた。 「よし! あの恥知らずの反乱者どもに一泡吹かせるぞ! 全艦、敵左翼に一斉射撃、その後突撃して一気に突破する!」 ウェールズは本国艦隊司令長官としての責務を果たすべく、傷つきながらも必死の抵抗を続ける残存艦に新たな指示を下した。 レキシントン平原上空で行われたアルビオン王立空軍本国艦隊と反乱艦ロイヤル・ソヴリン号の戦いは、開戦直前にロイヤル・ソヴリン号に乗り込んでいたクロムウェルという司教の演説により、出動した艦隊の内、約四十隻が反乱に同調し、大方の予想に反して反乱軍の勝利に終わった。この戦いの後、反乱軍はハルケギニア統一と聖地奪回を旗印に掲げた貴族連合『レコン・キスタ』の名乗りを上げ、クロムウェル司教は総司令官の任に就いた。 一方、レキシントン会戦から辛うじて撤退に成功したウェールズ皇太子は、王都ロンディニウムに帰還すると残存兵力をまとめ上げてレコン・キスタ討伐に乗り出した。しかし……、その後も戦場において、宮殿において、そして駐屯した街において多くの離反者が現れることとなり、大小問わず全ての会戦で敗北を続けることとなった。 こうしてアルビオン大陸での拠点を次々と失ったアルビオン軍―――王党派は王都ロンディニウム失陥後、残存した千にも満たない兵力を率いて大陸の端にあるニューカッスル城へと立て篭もることとなった。それに対し、レコン・キスタ軍は離反した諸侯や傭兵、さらにはオーク鬼やトロル鬼を戦力に組み込んで数万という兵力へと膨れ上がっていた。 兵站を整え、陣容を揃え直した後に行われる総攻撃、それがアルビオン王家最後の日になるであろうことは、誰の目にも明らかになっていた。 トリステイン王宮の一室、内装が整った執務室にて一人の男性が報告書に目を通して顔をしかめていた。真っ白な白髪の上に高位の聖職者にのみ許される球帽をかぶり、灰色のローブを身につけた痩せすぎの老人。彼こそトリステインの内政と外交を一手に執り行っているマザリーニ枢機卿であった。 「そうか……ロイヤル・ソヴリン号の反乱が火種となって、一気に燃え広がったという訳か」 骨ばった指で報告書をめくり、記されたレキシントン会戦とその後の顛末を読み終える。この報告書を持ち込んだ官吏は不安そうな表情でマザリーニ枢機卿を見つめていた。 「枢機卿……、我が国としてはどのような立場を採られます? 反乱勢力、いえレコン・キスタはハルケギニア統一を掲げております。状況によってはアルビオン一国の問題では済まなくなりますが?」 部下の言葉に、マザリーニ枢機卿は報告書から目を離し窓の外を見やる。ちょうど夕暮れの日差しが、窓から見える王宮の中庭とトリスタニアの町並みを染め上げていた。 「こちらから手を出す必要ないあるまい。向こうから何も支援を求められていない以上、派兵する大義名分もない」 冷徹さすら感じさせる言葉に官吏は息を呑む。しかし、同時にマザリーニ枢機卿の判断も間違っていないことを彼は悟っていた。 トリステインの国力は年々低下の一途を辿っており、高位の貴族の中には王室への忠誠を軽視し、既得権益のために国を貪っている者も少なくない。そして平民や下級貴族の有能な人材が、隣国ゲルマニアへ流出し続けていることが、さらに国力低下への拍車をかけていた。仮にアルビオン王家から援軍を求められたとしても、トリステインは十分な兵力を派遣するだけの余力はどこにもない。 「しかし、状況がどちらに転んだとしても、対応できるだけの手を打っておく必要はある」 「は……」 マザリーニ枢機卿は執務机に積んであった書類の中から、一枚の外交文書を取り出す。それはゲルマニア皇帝からの親書であった。 「今夜中にゲルマニア皇帝への返書を用意する。明日の夜明けと同時に使者を出立させるように手配しておくように」 「了解いたしました」 官吏の返事に対し退室するように手を振ると、マザリーニ枢機卿は返書をしたため始めた。一礼を入れた官吏が退室し、足音が遠ざかって聞こえなくなると筆を置き、再び窓の外を眺める。 「内憂を払えぬ王家に存在の価値はない、か……」 その呟きを発したマザリーニ枢機卿本人が、まるで自分のことを言うかのように自嘲気味に苦笑を浮かべる。まるで、トリステインも内憂を抱えて、それを払いきれないと認めてるかのように……。 夜の帳がトリスタニアに降り、働いていた者もある者は家路へとつき、ある者は盛り場へと繰り出す。何ら変わらない日常を謳歌する者たちの姿であった。その裏では、決して表に出ることのない者たちもいた。彼らは夜闇の中でこそ活発になるのであった。 そんな裏社会の者たちが集まる場所―――表向きは裏路地にひっそりと店を構える寂れた酒場に、『土くれ』のフーケが姿を現したのは、トリステイン魔法学院での騒動から十日ほど経った日の夜であった。 「……久しぶりだな」 店の奥、カウンターの中でコップを磨いていた五十ほどの男が、店に入ってきたフーケにチラっと視線を向ける。大して広くない店内には、何人かの堅気ではありえない雰囲気を纏った男たちが酒を飲み、扇情的な衣装で身を包んだ数人の娼婦たちが客を流し目で誘っていた。 フーケは無法者たちの値踏みするような視線を適当にあしらいつつ、カウンターの椅子の一つに腰掛けた。 「ああ、当分忙しくて身動き取れなかったからねぇ。……それで頼んでいた送金は出来てるかい?」 「アルビオンへの送金なら済ませてある……が、問題が発生した」 問題と聞いて、フーケの形のいい眉が少し釣りあがる。 「どういうことだい?」 その問いかけにマスターは答えず、ただただコップを磨いていた。フーケは舌打ちをしながら、カウンターにエキュー金貨を数枚叩きつけるように置く。 「アルビオンで反乱が発生した、それで向こうは大騒ぎになっている」 手早く金貨を回収しながら、マスターは感情と抑揚のない声で答える。フーケは反乱と聞いて嘲るような微笑みを浮かべた。 「へぇ~……、そいつはご苦労なこった。それで? アルビオンの王家どもは反乱鎮圧にどれくらい苦労してるんだい?」 「全戦全敗。傭兵たちの話を聞く限りでは、ニューカッスル城に追い込まれた王家は今月中にも倒れるという話だ」 アルビオン王家が倒れる―――その言葉はフーケの顔から嘲笑をかき消し、驚愕へと変えていった。 「それは本当かい? あのアルビオン王家を圧倒してるってのかい!?」 「間違いなく本当だ。ロイヤル・ソヴリン号を始めとして艦隊の大半と貴族、どうやったかは知らんがオーク鬼やトロールまで反乱軍の指揮下に入ってるという話だ。それに王家に忠誠を誓っていた有力諸侯や側近までもが、次々と王家から離反しているようだな」 「……は、ははは。そいつは愉快だねぇ……」 フーケの軽口は精彩を失っていた。かつて自分の家を、反逆者として貴族の名誉を剥奪したアルビオン王家。それが惨めにも指揮下にあったはずの軍に反旗を翻され、諸侯に見放されて倒れ、傭兵やオーク鬼やトロル鬼といった連中に名誉も誇りも奪われて散っていく様子が思い浮かべていた。同時に、自身の中にあった復讐心が燃え上がらずに、ぶすぶすと燻っている感触を感じていた。 「そういうわけだ。その反乱軍―――ハルケギニア統一と聖地奪還のための貴族連盟レコン・キスタと名乗っているが、そいつらの影響でルートも一部混乱している。ルートそのものは生きているが、届くのは当分先になるな」 「ハルケギニア統一と聖地奪還……? ははは、そりゃあ悪い冗談ね? それとも夢物語を目を開けたまま話してるのかしら?」 「さぁ……な」 そこで話は終わったとばかりに、マスターは磨き終えたコップを脇に置き、別のコップを手にとって磨き始めた。 フーケは整理のつかない感情と共にレコン・キスタのことを思考の脇に追いやると、最も重要なことを思い浮かべた。送金の受取人―――大切な妹分と養っている孤児たちの顔を思い浮かべる。戦火が、そして戦後に職を失い無法者と化す傭兵どもが彼女たちを襲わないのか、と。 「そうだ……、もう一つお前の耳に入れておきたいことがあった」 衆目に晒される危険を覚悟で妹分たちをトリステインに連れてくるべきかと考えていたフーケは、マスターの言葉に顔を上げる。 「この情報はサービスだが、最近『土くれ』のフーケを探っている者がいる」 「探っている者? そりゃあ、衛兵や貴族の使い走りがフーケを追い掛け回していて当然じゃないか」 「そういう連中とは違う奴、という話だ」 磨いていたコップを置くと、マスターはフーケを正面から見据える。その雰囲気にフーケも思わず息を呑んだ。 「白い仮面をつけたメイジなのだが……フーケの名の他に、マチルダ・オブ・サウスゴータの名でも探している」 「ッ!?」 かつて捨てることを強いられた貴族としての名前を聞き、フーケの顔が蒼白になる。 「幸いと言うべきか、そのメイジは裏の礼儀には詳しくないようだ。ここの存在にも気付いてないが、せいぜい気をつけたまえ」 「あ……ああ、気をつけておくよ……」 アルビオン王家に訪れるであろう終焉と、マチルダ・オブ・サウスゴータの名で彼女を探っている者の存在。二つの衝撃的な事実にフーケは無性に喉の渇きを覚え、ワインを注文し、それを一気にあおった。喉の渇きはそれで癒されたが、思考を乱れはアルコールでは抑えることは出来なかった。 その日は普段よりも早く酒場を後にすると、フーケは学院へと戻ることにした。一度、学院の自室に戻り、今後のことを整理することだけを思っていた。 そのため――― 「あ……、忘れてたよ」 エレアノールから頼まれていた情報の収集を思い出したのは、月明かりに照らされる学院の門が見えた頃であった。 ルイズは机に向かい、昼間の授業で習ったことの復習をしていた。実技では限りなく底辺に近い成績だが、座学では学年でもトップクラス、その理由はこまめな予習復習にあった。無論、魔法が使えないことに対して、使えるようになりたいという自然な欲求が勉学に駆り立てているのだが、同時に座学だけでもトップクラスにいなければ実技の赤点がフォローしきれないという現実的な問題も努力の一助になっていた。 ルイズの後ろでは、エレアノールが厨房から持ってきた熱い湯でお茶の準備をしていた。部屋中にお茶の香気が、その準備が進むにつれて徐々に浸透していく。 「ルイズ様、そろそろ一息入れられてはいかがですか?」 「……ええ。それじゃあ、そっちのテーブルに貴女の分と一緒にお願い」 一緒にお茶を飲もうという意味を正確に解釈したエレアノールは、テーブルに二人分のお茶とお茶請けのクッキーを用意する。 「いい香りじゃない、上手く淹れたのね」 「ええ、シエスタさんに教わりましたから」 エレアノールの言葉に、なるほどとルイズは頷く。 「ああ、そういえば最近よく一緒にいるわよね」 無意識に呟きながらお茶を口に含み、口中に広がる風味に頬を綻ばせる。ルイズの肥えた舌も満足させる淹れ具合であった。 続いて、お茶請けのクッキーに手を伸ばして、一つ摘み上げる。 「これも貴女が作ったの?」 「それは頂き物です。先ほど、女生徒さんたちから食べてください、と」 「あ~……、なるほど」 納得半分呆れ半分で頷く。恐らくファンクラブの誰かの手作りクッキーなのだと、ルイズは見当をつけた。 ルイズは直接そういったことと関わりを持っていなかったが、たまに彼女を経由してエレアノールに手紙やプレゼントを渡そうとする者が現れるので知っていた。 ちなみに、文字の読めなかったエレアノールのために最初はルイズが音読していたが、数日前に行った文字の勉強の成果があっという間に現れ、今ではエレアノールも読めるようになっていた。 (そういえば、今日もギーシュとマリコルヌが一緒に歓談してたわよね。あとモンモランシーも) クッキーをかじりつつ思い返す。ギーシュがエレアノール風の青銅ゴーレムを作ってその美しさを讃えつつ自分の腕前を自画自賛し、マリコルヌがそれを一体欲しがって取り合いになり、最終的に呆れたモンモランシーがギーシュの脳天に一撃を入れるという、お笑いの寸劇のような一幕があった、と。 そこまで思い出したところで、ルイズは笑いの衝動に襲われる。辛うじて笑い出さずに済んだが、我慢で歪めた表情にエレアノールが不思議そうな眼差しを向けてきた。 「あの? お口に合いませんでしたか?」 「え? ぅ……そ、んなことないわよ……ぷぷっ」 しばし不思議そうにしていたエレアノールであったが、結局そのことを問いただすことはなかった。 こうして、多少不自然なこともあったが、ルイズとエレアノールのお茶の時間はゆったりと流れいった。 部屋の隅に立てかけられていたデルフリンガーの「いやぁ、平和だね~」という呟きがそのまま情景になったように。 ―――しかし、その平穏とは裏で、ハルケギニアに戦乱の嵐が襲い掛かろうとしていた。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1330.html
三人! 使い魔が来る! 二人、虚無の使い魔は首都ロンディニウム突入! 背負うはデルフリンガー、またがるはアズーロ。 待ち受けるは玉座を守護するメイジの精鋭! 「この人数、どうやらクロムウェルはそこにいるようだな」 「敵は十人ってところかぁ~? 上等だぜ~」 「まー相棒一人でも十分さね」 「キュイッ!」(俺の相棒一人でも十分だよ!) 目指すは前方の扉、ただ前を向く二人、物怖じせず突き進む。 轟音が響く。人が殴り飛ばされる音、壁や床が粉砕される音。 戦士の咆哮、敗者の悲鳴。 それらを聞きながら、彼は待つ。チャンスを待っている。 メイジを片づけた承太郎達は次々に扉を破って進み、玉座の間にやってきた。 勢いよく扉を蹴り壊して押し入ると、天井は高く、部屋は広く、アズーロの巨体でも結構自由に動けそうな空間だった。 そして玉座に堂々と座る男の姿。 「てめーがクロムウェルか」 男は答えない。違和感を持つと同時に、そこいらにある柱の影から、無数の敵が姿を現す。それは異形であった。 ドラゴン、グリフォン、マンティコア、四本の腕に武器を持つ騎士、人馬一体となって槍を構える者、三メートルの巨人の戦士。他にも様々な怪物がいた。 「これは……?」 「ガーゴイル(魔法人形)だな。ゴーレムと違って擬似意志で動く連中だ」 デルフリンガーは即座に敵の正体を見抜き、それにより対処法は決まった。 生物でないのなら動けなくなるまで粉砕すればすむ話だ。 「遅れるなよ仗助」 「この程度のガーゴイルでよ~……俺達にかなうと思ってんのか?」 二人は二方向に分かれて疾駆すると、それぞれガーゴイルに飛び掛る。 「オラオラオラッ!」 巨大な口腔から鋭い牙を覗かせて迫るドラゴンの口に飛び込んだ承太郎は、内側から拳のラッシュを叩き込んで頭部を完全に粉砕する。 それでも爪で反撃しようとするドラゴンの腕を即座にデルフリンガーで切断、続いて腹部に右手をぶち込むと、左手で腹を支えて持ち上げ、 横から攻撃しようとしていた人馬に向けてドラゴンをぶん投げる。 ドラゴンは投げられた衝撃でバラバラになり、人馬はぺしゃんこになった。 続いて屈みながらデルフリンガーを振り回して斬り上げ、飛び掛ってきていたマンティコアの胴体を両断しながら、スタープラチナの両手を横に突き出して、両断された胴体をさらに粉砕する。 破片が飛び散る中、承太郎の身体が陰に包まれた。 三メートルの巨人がハンマーを振り下ろしてきたのだ。 時を止めるまでもないと、ガンダールヴの足の速さを生かして回避すると、今度はスタープラチナの脚力で巨人の頭まで一気に跳ぶ。 「オラオラオラオラオラッ!」 そして落下しながらスタープラチナのラッシュを顔、首、胸、腹と叩き込み、さらにデルフリンガーでも連続して斬りつけて巨人の半身をバラバラにした。 着地すると同時にスタープラチナで右足の膝を砕き、デルフリンガーで左足の膝を切断して、巨人は戦うすべを失った。 「後ろだ相棒!」 デルフリンガーが叫ぶと同時にスタープラチナが背後目掛けて拳を振るう。 四本の剣を振り回す騎士の手を的確にスタープラチナの拳が打ち壊し、騎士が手放した剣を即座に奪い取ると、四本それぞれ別方向に投げる。 承太郎の前方にいたグリフォンの首に一本、仗助の背後に迫っていたマンティコアの額と胴体に一本ずつ、かく乱のために飛び回るアズーロを追いかけるドラゴンの翼に一本。 一騎当千の戦いをしながら、承太郎は仲間のフォローも完璧に行った。 承太郎と仗助は半数以上のガーゴイルを片づけると、一気にクロムウェルに迫る。 デルフリンガーを握りルーンを発動させている承太郎が一足早くたどり着くと、クロムウェルの胴体を玉座ごと真っ二つに切り裂いた。 悲鳴すら上げずにクロムウェルは倒れ、動かなくなった。 いや……むしろ斬られる前から動いていなかった? 承太郎は咄嗟にクロムウェルの両手を確認した。アンドバリの指輪は、無い。 「……まさか…………」 直後、死んだはずのクロムウェルが突然狂ったような笑みを浮かべて、隠し持っていたナイフを承太郎の足に深々と刺す。 「ぐうっ!?」 「承太郎さん!」 してやられた、と思いながらデルフリンガーを振るいクロムウェルの首を刎ね、さらにスタープラチナの足で頭部を踏み潰した。 するとクロムウェルはピクリとも動かなくなり、同時に承太郎達を襲っていたガーゴイルの動きも止まった。 「くっ……こいつはアンドバリの指輪に操られていた、死体だ」 「まさか! その顔は間違いなくクロムウェルっスよ!?」 仗助は教皇の見せたクロムウェルの似顔絵を思い出しながら叫んだ。 まさか影武者? 顔を変える魔法もあると仗助は聞いた事があった。 とにかく今は承太郎の負傷を治して、今後の行動を考えねばならない。 仗助は玉座まで駆け寄ると、クレイジー・Dで承太郎の傷を触って治した。 出血もズボンの破れもきれいサッパリ無くなる。 それから二人は無言でクロムウェルの死体を見下ろし、頭を悩ませていた。 すると、部屋の隅から物音がした。 視線を向けると、そこには腰を抜かして怯えているメイジの少年の姿があった。 服装を見るにアルビオン軍の者で間違いはない、負傷しているのか頭や腕に包帯を巻いている。 「誰だ」 「ヒィィ~ッ! み、見逃してください! 僕はただクロムウェル様に報告に来た連絡兵ですぅ~!」 承太郎が問いかけると、殺されると勘違いしたのか少年は酷く怯えて命乞いをした。 とりあえず承太郎じゃ迫力がありすぎるので、仗助が少年に歩み寄る。 「ま~そう怖がるなって。お前、アルビオンのメイジか?」 「そ、そうです~! 王党派が負けて、仕方なくクロムウェル様に従ってたんです! ですから許して下さい! クロムウェル様が殺されたんだから、僕達の負けです」 「別に殺しはしねーよ。殺さずにすむ場合は殺さないよう注意して戦ってたしよ~」 少年まで数歩の距離に近づいた仗助は、そこで立ち止まり少年の額を見る。 「ところで、おでこに怪我してるみてーだけど、大丈夫か? ちょっと見せてみろ」 「これは敵の魔法で火傷しただけですよ~、見て気持ちのいいものじゃ……」 「いいから見せろって。見たらそれ以上は何もしね~」 そう言いながら仗助はゆっくりと少年に近づくと、クレイジー・Dを出現させた。 少年は突然現れたスタンドに驚いて悲鳴を上げ、直後クレイジー・Dは少年の顔面目掛けて拳を振った。 だがそれよりもほんの一瞬だけ早く、少年の右手から『右手』が伸びる。 「何ッ!?」 咄嗟にスタンドの左腕でガードする仗助だが、威力を殺しきれず後ろに吹っ飛ばされる。 「……いきなり殴ろうとする……何て野郎だッ」 怯えを消した少年は、獰猛に光る双眸で仗助を睨みながら立ち上がった。 「て、てめー……ミョズニトニルンか……」 クレイジー・Dの右手には、吹っ飛ばされる直前に掴んでいた少年の包帯があった。 そして少年の額には使い魔のルーン。豹変し狂気に満ちた双眸が仗助を睨む。 「てめー等はクロムウェル殺しの罪をかぶって、ここで死んでもらうぜ!」 少年が仗助を指差すと同時に、首だけになっていたドラゴンのガーゴイルが、突然口を開いて仗助の背後から噛みつこうと迫った。 ふいうちのため仗助は反応できず、ただギョッとして動きを止めるだけだった。 だが次の瞬間、そのドラゴンの頭は粉微塵になっており、仗助のかたわらには承太郎が立っていた。 「じょ、承太郎さん……助かったっス」 「……注意しろ仗助。奴は『お前が殴りかかるよりも早く殴り返していた』……!」 その奇妙な言葉に、少年からとてつもない凄味を感じ取る仗助。冷や汗が頬を伝う。 少年は獰猛な双眸を真っ直ぐに承太郎と仗助に向け、メイジと偽装するために持っていた杖を耳元に当ててささやいていた。 「どうやら帽子の男がガンダールヴで、時を止めるスタンド使いはこいつです。 リーゼントはヴィンダールヴ……謎だったスタンド能力は手で触れた物を直す。 肉体の傷もズボンの傷も関係なく、両方直してました。間違いありません。 ……こちらの能力はまだバレてませんが、どうします? 『ボス』」 ボソボソ声だったので、その独り言は承太郎達には聞こえなかった。 が、独り言を喋っているという事は判断できた。 「仗助……。奴は恐らくアンドバリの指輪も持っている。 スタンド能力、ミョズニトニルン、アンドバリの指輪。 この三つを攻略しねーと……奴を倒すのは難しいようだな」 「グレート。けど時を止めれば指輪で傷を治したり、スタンド能力を使う暇も無いっス。 承太郎さんの傷は俺が治せますから……射程距離まで近づいてみてください。 まだ残ってるガーゴイルは俺が抑えておきます」 首都ロンディニウムの城、玉座の間。 ここに三人の虚無の使い魔が集い、戦いの火蓋を切って落とそうとしていた。